売る力
著
セブン&アイ・ホールディングス会長兼CEOの鈴木敏文氏が書いた『売る力 心をつかむ仕事術』を読了。秋元康氏や佐藤可士和氏といった、異分野の方々との交流について若干、重複して感じられた記述はあれど、全体を通じて鈴木氏のビジネスに対する姿勢が明快に伝わってきて面白かったです。ちなみにタイトルにある「売る力」とは、「はじめに」のなかでお客様から見て「買ってよかった」と思ってもらえる力
と定義されています。
グループとして「変化への対応」と「基本の徹底」
を日本柱としてスローガンに掲げているという点については、短期的な戦略と中〜長期的な戦略という見方・分け方ができるのかなと思いました。そしてイノベーションを二種類、すなわち本当にこれまで無かったものを生み出すことと、既存のものに新たな意味づけを加えることに分けて整理している点は分かりやすかったです(よく言われるように、Appleが得意としているのは後者のイノベーションでしょう)。
そして本書で最もためになったなぁと思う指摘は、「お客様のために」考えるのと、「お客様の立場で」考えるのとでは、一見同じように見えて、まったく違った答えが出てくることがある
というもの。理由は単純明解で、「お客様のために」といいつつ、「売り手の立場で」考えていることが多い
から。「お客様」という言葉を別の何かに言い換えても、いろいろ考えさせられる指摘です。
加えて、お客様の立場で考えることを実践のうえコストがかかり、効率が悪くても、お客様が共感共鳴するものをつくっていけば、必ず、結果が出て、収益が確保できるようになる
と断言されているのはさすがだなと。そこは、どれだけの時間的な尺でもってROIを測るかみたいな難しい論点もありますが......自分の携わるWebデザインについて言えば、ユーザーの立場で必要な品質を上げることに対しては自信をもって邁進すべき、ということですね(そしてアクセシビリティは間違いなくユーザーの必要とする品質であると確信しています)。