Re: アクセシビリティって儲かるの?
著
元記事のアクセシビリティって儲かるの?では、視点なり立場がやや不明確な印象があり、タイトルだけからすると(自分のように)ビジネスとしてWeb制作を行う立場で書かれたかのイメージを持ちましたが、本文を読み進めたところWebサイトを運営する企業視点の印象が強かったので、そのつもりで。まぁ、両者にあまり本質的な違いは無い気もしますが。
アクセシビリティのような「すべてのユーザーのため」の「売り上げ (コンバージョン) に直結しない」施策は、優先度の高い要件として実感されにくい、という実情もあります。
アクセシビリティが優先度の高い要件として実感されにくい
という実態は確かにあると思います。しかしその理由については、自分は少し違った見方をしており、ユーザブルであるためにはまずアクセシブルでなければならない、との理解が浸透していないためではないかと。Webサイト上での売上なり効果を最大化するには、ターゲットとするユーザーに対しユーザビリティを向上させる必要があるわけですが、その大前提としてのアクセシビリティにもっと目を向けるよう、啓発する必要があると思います。
ビジネスの観点でアクセシビリティを考えたときにひとつ言えるのは、「儲かるの?」以前に、自社サイトのアクセシビリティが不十分な場合、それは「機会損失」(顧客の離脱による売り上げの取りこぼし) を引き起こす恐れがあるということです。
記事の冒頭でROI (費用対効果) を算出することは容易ではなく
とお書きになっているのと同じで、アクセシビリティの不足がどれだけ機会損失を招いているか把握することは、容易ではないと思います。離脱であれば(一度でもWebサイトにアクセスしてくれれば)、離脱率のようなかたちで計測できるでしょうけど、離脱要因がアクセシビリティにあることを正しく判断するのは難しいでしょう。そういうわけで、機会損失を防ぐという目的も、残念ながら現状を変えるに十分な説得力を持ってはいないように感じます。無論、計測できないから、説得力がないからといって、それを放置して良いわけではないですけども。
ユーザー側の多様性 (様々なデバイス、様々な入出力手段、様々なコンテキスト) に広く対応し、あらゆるユーザーが Web サイトを利用できるようにすることで、つまらない機会損失を撲滅する...そんな風にアクセシビリティに対する意識が変わってゆけばいいな、と思います。
その点は自分も完全同意なのですが、アクセシビリティ単体で儲かる・儲からないを論じるには、言葉の持つイメージがあまりにも障害者対応、高齢者対応に偏り過ぎてしまった印象が強く、その点はかつて「Webアクセシビリティ」のリブランディングを書いた頃から変わっていません。Web業界はもとより、広くWeb制作に関わる誰もが、Webコンテンツが普遍的に備えるべき品質としてアクセシビリティを捉え直さない限り、現状を変えるのは困難だと感じていますし、それに向けて自分のできる範囲でできることをやっていきたいなと......それがより良いWeb、より良い社会を形作るはずと信じて。