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アクセシビリティ・サポーテッドの意義ともやもや感

アクセシビリティ・サポーテッドを巡る論点の整理でも書いたように、アクセシビリティ・サポーテッドという考え方は、非常に現実的であると思います。支援技術を必要とする人々に対し、絵空事ではないアクセシビリティを提供するうえでは、至極まっとうであるとも感じます。その一方で、穿った見方をすれば、以下のような展開を招く可能性もゼロではないのでは......というのが自分の懸念です:

  1. ある国(以下「地域A」)において、アクセシブルな実装方法にあまり対応していない、あるいはHTML5とかWAI-ARIAといった新しいWeb標準への追随が十分ではないような有償の支援技術(以下「支援技術X」)が広く普及
  2. ある実装方法が地域Aにおいてアクセシビリティ・サポーテッドかどうかを検討する際、その普及率の高さを背景として、支援技術Xの仕様を無視できなくなる
  3. WCAG 2.0への準拠を実現するうえでは、アクセシビリティ・サポーテッドな実装方法を採用することが制作者に求められるため、実装方法集に掲載済みであろうとなかろうと、支援技術Xの対応している実装方法しか採用しにくくなる
  4. 地域Aの制作者(やWebアクセシビリティの専門家)が、支援技術Xのベンダーに改善を呼びかけるも、ベンダーはベンダーで開発工数の捻出に苦慮しており(普及しているといっても、それほど多くの数が売れているわけではない)、一向に改善が進まない
  5. 結果として、Webアクセシビリティ確保の気運が鈍化したり、制作者が新しい実装方法や新しいWeb標準を利用することに消極的になるなどし、地域Aでは他の国や地域と比べ相対的にWebサイトの進化が妨げられる

上記はやや極端な筋書きかもしれませんが、これと近い展開は現実世界でも十分発生し得る、と思っています。仮に発生してしまった際の打開策として、国に支援技術Xのベンダーを助成させるとか、他所で開発されたオープンソースの優れた支援技術をローカライズして普及させる(スクリーン・リーダーで言えばNVDA日本語版はその典型)といったことが考えられますが、そもそもアクセシビリティ・サポーテッドという考え方がどれだけ有効なのかという点で、もやもやが残ります。結局のところ、

ワーキンググループは、何をもってサポートしているとするかを定義するに留め、どこまで、どれだけ多くの、あるいはどの支援技術がそのウェブ技術をサポートしていなければならないかという判断については、組織、調達、地域社会などにとっての要件を定める各々の状況により近いところにいる地域や団体に委ねることとした。

というのを最大限「活用」するしか無いのではないかと。つづく(かどうかはわかりません)。

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