アクセシビリティ・サポーテッドを巡る論点の整理
著
Re: アクセシビリティ・サポーテッドの功罪の続き。あれから、CSUNに行ったついでで中根さんと一緒に食事をしながら意見交換をしたり、またWAICとして「アクセシビリティ・サポーテッド(AS)情報」 2014年3月版を公開したりしたのだけど、アクセシビリティ・サポーテッド(以下「AS」)を巡る論点が、自分なりだいぶクリアになってきたので覚え書き:
- AS情報は、誰が提供すべきものか?
- W3C/WAI側での定義はない(WCAG 2.0への適合を理解する を理解する | WCAG 2.0解説書より引用:
WCAGワーキンググループは、正確な情報を提供し、コンテンツ制作者と利用者双方にメリットのある文書のみが、長期的に市場の評価を得るものと考えている。
) - UA/支援技術ベンダーが積極的に提供すべき類の情報ではないか?
- 製品の仕様を最も正確に把握しているのはベンダー自身ではないか?
- どれだけ多くの実装方法をサポートし、またその実態を公表しているかが、製品としてどれだけ優れているかの客観的指標になり得ないだろうか?
- より多くの実装方法をサポートすることが、ベンダーにとってより多くのWebデザイナー/開発者の支持を得ることに繋がり、製品に対する信用・信頼の向上、さらにはユーザーの増加という正のフィードバックに繋がらないだろうか?
- W3C/WAI側での定義はない(WCAG 2.0への適合を理解する を理解する | WCAG 2.0解説書より引用:
- AS検証にかかるコストは、誰が払うべきか?
- テストファイルの作成、テスト結果の収集、テスト結果を踏まえた議論には相応の工数が発生する
- 予算をもたないWAICにおいて、ボランティア的にこれを継続するのは結構辛い
- 新しい支援技術やUA、実装方法の登場に、WAICの人的・時間的リソースだけではキャッチアップできない
- 2014年3月版の前のリリースは、2012年5月版であり、だいぶ間があいてしまった
- WAIC以外の人や組織によるテスト(ボランティア)を呼びかけ、テスト結果を収集するのも一案だが、WAICとして情報を公開する以上、やはり相応のコストは避けられない
- テストファイルの作成、テスト結果の収集、テスト結果を踏まえた議論には相応の工数が発生する
- AS検証に用いるテストファイルは、誰が提供すべきものか?
- WAICとしてはAS情報よりむしろ、既存のテストファイルの見直しや、新たなテストファイルの作成に注力すべきかもしれない
- テストファイルの妥当性は、UA/支援技術ベンダー側ではなく、WAICのような公正中立的な立場から検証されることが望ましい
- WAICとしてはAS情報よりむしろ、既存のテストファイルの見直しや、新たなテストファイルの作成に注力すべきかもしれない
- 結局のところ、AS情報は役に立っているのだろうか?
- AS情報で取り扱っている実装方法しか採用してはいけないということではない
- AS情報の存在が、新たな実装方法の登場を阻害すべきではない
- WAICサイト上にあるAS情報関連リソースのアクセス数やダウンロード数は把握していない
- それらの数値を把握したところで、活用されている度合いの指標になるかというと、微妙
- Webデザイナー/開発者が、都度AS情報を参照しながら実装方法を検討するのは大変ではないか?
- 都度参照が理想的ではあるが、果たしてそれがコスト的に見合っているかは不明
- ASという概念がどの程度有効か、いまいちど検証されるべきではないか?
- AS情報で取り扱っている実装方法しか採用してはいけないということではない
個人的には、UAAGとASの概念をもっと有機的に関連づけることで、UA/支援技術ベンダーにも、Webデザイナー/開発者にもメリットがあるモデルを構築できないだろうか......と妄想しています。あくまでも妄想なので、あまり具体化できていないのですけど。ただ、AS情報というのが「Until user agents...」ってフレーズの反省から生まれたにせよ、印象としてはWebの進化を妨げかねないほどに現実路線を貫こうとした結果、WebをアクセシブルにするためのコストがWebデザイナー/開発者側に偏り過ぎているというか、どうも全体的なバランスが悪く映ってしまっていて、ASという概念そのものが画餅になってはいないだろうか?という懸念を抱いています。