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ほんとに使える「ユーザビリティ」

翻訳者の浅野紀予さんからいただいた、ほんとに使える「ユーザビリティ」を、先日バイコヌール宇宙基地打上げ見学ツアーに参加した際にロシアへ向かう機内で読了。著者のエリック・ライス氏はFatDUXグループのCEOであり、同社の掲げるWeb Dogmaは有名だそうですが、自分は本書でその存在を初めて知りました。

全体は「使いやすさ」と「優美さと明快さ」の2部構成になっており、前者はさらに機能性、反応性、人間工学性、利便性、万人保証性、後者は可視性、理解可能性、論理性、一貫性、予測可能性、これからのステップという各章に分かれます。基本的にはWebのユーザビリティを論じたものですが、引き合いに出される事例はWebに限らず広範で、勉強になりました。

各章の構成で目新しかったのが、それぞれの末尾に「その他のおすすめ本」「検索したいキーワード」というコーナーが設けられている点。特に前者については、日本語で翻訳書が発売されているものがあれば、しっかりその紹介もなされています。なので、特定分野をもっと掘り下げたい、というケースにもしっかり応え得るかと思います。冒頭イントロダクションのなかで、ボゴ・バドベックの3段階式ユーザビリティプランというのに触れられており、曰くユーザビリティを成就する段階に

  1. 誰もユーザビリティの話をしない。
  2. 誰もがユーザビリティを語る。
  3. 誰もユーザビリティの話をしない。

というのがあるそうです。これ、ユーザビリティに限らずあらゆる物事でそうだと思うのですよね。キャズムを越えてマジョリティに普及すれば早晩、誰も口にしなくなる(しかし実態としては根深く浸透している)状態に至る、みたいな。そこでまずナルホド確かにそうだなぁと深く同意をしたうえで、最後まで読み進めたわけですが、印象的だったフレーズとしては以下のものがありました:

また、本文についてでは無いけれど、浅野さんならではと思しき数多くの訳注が、実に素晴らしかったです。たとえばp.181の訳注5で、alt属性のツールチップ表示が特定のブラウザの実装に依存しており、あたかも全てのブラウザでそう実装されているかの誤解を招かないよう指摘されているのは、Webへの造詣が深いからこそでしょう。また英語圏の人間でなければ理解できない、少なくとも馴染みのないようなネタがあれば、しっかり日本人向けに背景から噛み砕いて解説してくださっているのは、なかなか真似出来ることではありません。第7章に登場する「共有参照」という単語を借りるなら、日本語圏向けの共有参照を豊富に盛り込んでくださったおかげで、大変読みやすい本に仕上がっていると思いますね。

なお気付いた限り一カ所、誤記をみつけてしまいました。p.205にある2点目の画像のキャプションで「訳注5」への参照がありますが、これは「訳注2」の誤りかと思います。重版の際は修正していただければと。

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