「レスポンシブWebデザインのこれから」の極私的フォローアップ
著
先日、仙台オフィス開設記念セミナー レスポンシブWebデザインのこれからというセミナーでお話させていただいたのですけど、そこで話したこと、話し忘れたこと含め、レスポンシブWebデザイン(以下「RWD」)に関連して最近思うところをまとめておくなど:
- モバイルファーストといっても、いまだデスクトップ環境からのアクセスが8割、9割というサイトは少なくない。なので、いつの時点でどこまでパワーをかけてモバイル/マルチデバイス対応すべきかは、しっかりアクセスログ解析結果を踏まえるべき。
- 最適化(≒専用化)と汎用化は、まったく方向性の異なるアプローチであり、RWDはやっぱり後者であると思う。RWDを最適化と称する向きはいまだに散見するけれども、何に対し、どういう尺度で最適と表現しているのかは補記すべき。
- スマートフォンやタブレット型デバイスの隆盛で明確になったのは、「Webサイト」と呼ばれてきたものの多くが実際には「PC専用サイト」であり、高い汎用性を備え閲覧環境の多様化に耐えうるべき「Webサイト」とは呼びにくくなった、ということ。
- いかにPC専用サイトも概ね閲覧可能とはいえ、スマートフォンやタブレット型デバイスで従来のPC専用サイトが使いやすいわけがない。操作性然り、可読性然り、表示速度然り。ゆえにデバイス個別の最適化手法が多く採用されてきたけれど、それはそれとして、より高い(PCだけでなしにモバイルデバイスもスコープに含めた)汎用性を実現するための手法として、RWDのニーズはある。
- 無論、最適化と汎用化はきっちりと太い線を引いて区別できるようなものではない。現実は、おそらく両者のあいだのどこかにサイト固有、ページ固有、コンテンツ固有の落としどころなり最適解がある。
- Surfaceのような製品が登場し、いよいよモバイルとデスクトップの区別が意味をなさなくなってきている。モバイル端末を自宅でPCがわりに使うような人がアメリカではそれなりに多いと聞くけれど、そういうコンテキストの多様化の影響も、モバイルとデスクトップの区分をどんどん曖昧にさせている気がする。
- RWDだけが唯一、同じコードベース(HTMLソース)でもってマルチデバイス対応を実現する手法というわけではない。Appleのサイトがよく引き合いに出されるけれども、つまりそういうこと。RWDの3要件(フレキシブルなグリッド、フレキシブルなメディア、メディアクエリー)を満たしているかどうかより、同じURLでもってデバイスを問わずコンテンツをどこまでスムースかつ確実に流通させられるか、こそが大事。
- RWD、という言葉は既にバズワード化しているけれど、そんな言葉は遠からず消えてなくなるのではないか。それは何もRWDという手法、考え方が消えるわけではなく、Webデザインという言葉の意味する内容に取り込まれ、わざわざそれをRWDと区別して呼称する必要がなくなるということ。今でこそ多くのデザイナーが当たり前のようにWeb標準に準拠し、CSSでレイアウトをしているけれど、それをわざわざ敢えて言葉で表現しなくなったのと同じように。
- デバイスAPIの標準化と実装により、単にスクリーンの解像度だけでなしに、ユーザーのコンテキストをコンテンツ提供側がより正確に知る術はさらに充実していくはず(あくまでもユーザーが情報開示を許可していれば、だが)。となるとRWDはまだまだ序の口、Webデザインはきっともっと進化していく。課題は多いだろうけれど、WebをよりWebらしくデザインできる時代の到来を僕は歓迎したい。