@kazuhito
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「官公庁サイトの7割以上はアクセシビリティ対応に問題あり」は本当か?

正直あまり気が進まなかったけれども、@bakeraさんに

また @kazuhito さんの出番が。 http://www.aao.ne.jp/research/cronos2/2012_gov6/specs.html ...

なんてつぶやかれたら、何か書かないといけないかなぁと。官公庁サイトの7割以上はアクセシビリティ対応に問題あり - A.A.O.調査 | ネット | マイナビニュースなどで取り上げられている調査結果、A.A.O.|A.A.O.ウェブサイトクオリティ実態調査 中央省庁・独法・特別民間法人編第6回 集計結果発表についてのお話。当然のことながら、調査を実施したアライド・ブレインズの信用を貶めんとしてこの記事を書いているわけではありません。アクセシビリティの状況を自前で調査・公開し、その重要性なり必要性を社会にアピールすることは、同社の商売上の都合を差し引いても素晴らしい取り組みだと思います(実施に要した工数の多寡を問わず)。僕が個人的に問題視しているのは、その調査方法です。

A.A.O.|A.A.O.ウェブサイトクオリティ実態調査 中央省庁・独法・特別民間法人編第6回 調査概要によると、同社が開発した「CRONOS 2」というプログラムを使ってアクセシビリティが評価されているようですが、結局のところ僕が以前政党ウェブサイト全ページクオリティ実態調査の信用性について書いたときから調査方法には大きな変化が無いようです。つまり画像に対する代替テキストの付与状況にしろ文書構造に関するHTMLの記述状況にしろ、具体的に何をどういう基準で評価(レベル分類)しているのか、その詳細が明らかにされておらず、第三者が追試を行い同等の結果が得られることを検証できないのです。果たしてそのような調査方法で、「7割以上は問題あり」などと言い切れるものでしょうか?無論、「CRONOS 2」の仕様がどうであれ、問題を孕んでいる可能性は論じることはできるでしょうけども、そもそもプログラムによる機械的な検証に頼った時点で断言はできないはず。ちなみに僕はかつて「CRONOS 2」の詳細を同社に問い合わせたことがありますが、答える必要がないとの一点張りで教えていただけませんでした。

僕が先の「政党ウェブサイト全ページクオリティ実態調査の信用性」を書いたのは、2009年2月のこと。その後2010年8月にJIS X 8341-3:2010が公示されていますが、これは2004年版のJIS X 8341-3をWCAG 2.0に協調するよう改正したものです。そしてWCAG 2.0といえば、(実態はさておき)試験可能であることに重きを置いて策定された経緯があります(2008年12月11日勧告)。ですから、いまどきアクセシビリティを客観的に評価するなら、WCAG 2.0の内容と完全に整合しないまでも、せめて基準が明確で第三者が追試可能な手法で評価していただきたいと自分は考えています。ましてやアライド・ブレインズはJIS X 8341-3:2010の理解と普及を促進するための組織、ウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)に参加されています。であれば尚更、JIS X 8341-3:2010なりWCAG 2.0の内容を十分に踏まえた評価手法を採用すべきではなかったか、と思います。

上記は個人的な意見に基づくもので、勤務先やWAICとは一切関係ありませんので、念のため。

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