政党ウェブサイト全ページクオリティ実態調査の信用性
著
この週末は、家族全員でほぼ1ヶ月ぶりに千葉のほうに帰省してのんびり。おかげで、僕は宿題だったJIS改正原案「高齢者・障害者等配慮設計指針 − 情報通信における機器・ソフトウェア・サービス − 第3部:ウェブコンテンツ」のレビューをすることができました(提出期限ギリギリ、というか社内的には既にオーバーしていたのだけど)。それでふと、先日アライドブレインズの発表した第1回 政党ウェブサイト全ページクオリティ実態調査について覚え書きしていなかったことを思い出した次第。調査結果はさておき、調査の概要には、調査・分析方法として以下の記述があります:
アライド・ブレインズが独自に開発したウェブサイトの品質解析プログラム「CRONOS 2(クロノス2)」を用いて各団体のトップページよりリンクを巡回し、同一ドメイン内のHTML内容を収集・解析した。今回の調査では、「CRONOS 2」の各種収集データのうち、代表的な項目として以下のデータを取り上げ、分析した。
- 基本対応:画像に対する代替テキストの付与状況
- 発展対応:見出し、箇条書きなど文書構造に関するHTMLの記述状況
- リンク切れの状況:ページ内にリンク切れを含むページの、サイト全体に占める割合
→上記2項目とは別に、リンク切れの状況に関するデータを公表
上記からは、あたかもプログラムに頼った機械的な検証しか行っていないように思われます。しかし、機械的な検証だけで十分アクセシビリティが確保できているかを判断することは本来、困難なはずです(「CRONOS 2」が人工知能か何かを搭載しており、人間と同等の判断能力をもって代替テキストの内容や文書構造の妥当性を吟味しているのであれば、話は別ですが)。主観的な判断を最大限排除したいがゆえに機械的検証しか行わなかった可能性もあるにせよ、「CRONOS 2」の仕様なり詳細が公開されない限り、調査結果の信用性は危ういと感じました。
たとえば「代替テキストあり」というのが、内容まで踏み込んだうえでの判断なのか、それとも単にimg要素にalt属性が指定されていれば「代替テキストあり」としているのか、わからないわけです。同様に、「構造化あり」というのも何をもってして「あり」としているのか、よくわかりません(どんなWebページにだって、アクセシブルかどうかはさておき、構造は常に存在しているものでしょう)。
加えて分からないのが、A〜Eのレベル分類。引用した調査・分析方法でいうところの基本対応と発展対応の双方を元に分類していることは確かだけれど、それをどう5段階評価に結びつけているのかは書かれていません。低いレベルに分類された政党の肩を持つつもりはありませんが、分類の基準が明示されていないのはいかがなものかと。僕はなにも、レベル分けする行為自体を嫌悪しているわけではありません。状況をわかりやすく伝えるには、そうした手法が有効な場面もあるでしょうから。しかし、その前提として分類なり評価の基準が明示されていることは、必須だと思います(それが受け入れられるかどうかは、また別の話)。
第1回を謳っているからには、おそらく今後同じ政党を同じ手法で調査されるのだと思いますが、是非とも調査・分析手法の詳細やレベルの分類基準も合わせて公開していただきたい感じです。