トリガール!
著
鳥人間コンテストを題材とした、というだけでかなりレア度の高い小説、中村航著『トリガール!』を読了。先月末に開催された今年の鳥人間コンテスト会場でチラシをいただいたけれど、それより前からアマゾンの「ほしい物リスト」には登録していて、発売直後に近場のTSUTAYAで購入。先に買っていた『週末の鳥人間』と同じくらい厚みのある本で、最初はちょっとうぇって思ったけど、読み始めてみれば思いのほかサクサク読み進められました。行間とか文字の大きさとか、とにかくページあたりの文字量が『週末の鳥人間』と比べるとだいぶ少ないんだな。あらすじはというと:
一浪の末、工業大学に入学した女子大生・鳥山ゆきなは、ラブリーでスイートな学生生活を夢見ていたが、ひょんなことから人力飛行機サークルに入部。パイロット班の先輩である高橋圭、坂場大志と人力飛行機のパイロットとして、鳥人間コンテストを目指す。
そんな中、圭が怪我を負ってしまい、入部一年目のゆきなが急遽、出場することに。
坂場とともに、過酷なトレーニングを積む日々を過ごすが、2人は果たして大会に間に合うのか......!?
なんでも著者の中村氏は芝浦工業大学の出身で、かなり前から二人乗り人力飛行機を設計・製作していることで知られるTeam Birdman Trialに6年前から取材をしていたのだとか。確かに、その成果というのは全編を通じてよく顕れているように思います。人力飛行機のことをちょっと聞きかじった程度ではとても書けないであろう描写が、そこかしこに登場しますからね。実際に人力飛行機を作って飛ばした経験の持ち主という目線からすると、ここまでガチに書いてしまって一般の人から引かれたりしないか心配になるほど。まぁ、世の大半の人は鳥人間コンテストに出場する人力飛行機とかそれが製作される過程をテレビ番組(※今年の放映は8月27日夜7時からですよ)のごく短い時間、限られた情報源を通じてしか知らないはずで、バックグラウンドに多少なりとも興味が持てるなら、たぶん最後まで興味深く読めるのではないかと。
実際、僕も興味深く読んだのだけど、感想としては物足りないというか......言い方は悪いけれども、奇麗ごと過ぎる印象があります。もともと恋愛成分は控えめな小説だったんだけど、そういう側面でのドロドロしたドラマとか全然ないしね。機体の設計、製作、試験を通じてはもっと激しい意見の対立なり価値観の断絶があっておかしくないと思うけど、そこもだいぶ抑えられています。自分が昨今の鳥人間チームの内情に疎いだけで、もしかすると最近はむしろ本書で描かれている程度にみんな「うまく」やってるのかもしれないけれど。その点については現役の方々、あるいは先日OB・OGになったばかり(笑)の方々の感想を読んでみたいです。それでも、全体的にどうも爽やか過ぎる&青春し過ぎている感があって、それが違和感以上にちょっとした反感にも繋がっている感じ。うーん、結局のところ僕が歳くったってだけのオチかしら(汗