第3回宇宙旅行シンポジウム
著
航空会館で催された第3回宇宙旅行シンポジウムに参加しました。このシンポジウム、僕は前回・前々回のいずれにも参加しているのですけど、第2回はともかく第1回の模様は覚え書きしていません。なぜかというと、そのときはPCを持参せずに紙にメモしていて、後から記事を書き起こそうとしたところ、自分の字のあまりの汚さに萎えてしまった(&本気で一部解読不能)という。家を出る際、今回はどうしようか少し迷った末、結局は紙のノートを持参することに。夏場だけに、重たいPCを持ち運ぶことにはそれだけウンザリしてるってことです。かなり早くに会場に到着し、ステージ?向かって右側の最前列に自席を確保。その後@hakodaさん、@summerwindさんらと合流、お二人に挟まれて座ることに。また@summerwindさんの紹介で、(以前にもニアミスしていた)@hadukinoさんに開始前にご挨拶することができました。
基調講演は、宇宙飛行士/ジャーナリストの秋山豊寛氏による「宇宙開発ビジョンと宇宙旅行」。冒頭、世界宇宙飛行士会議で耳にした話として、ロシア人宇宙飛行士は飛行後も安定した暮らしを送れるけれど、アメリカ人宇宙飛行士は次の就職先に困っている人がいるとかいうトピックスは興味深かったです。飛行後のポストって、特段約束されているわけではないのかしら。もとより人数が人数だけに、日本とはだいぶ違った状況がありそうですけどね(少なくとも国民的英雄扱いは最早受けていないでしょうし)。そして例の二足歩行ロボットを月面に送る云々については「正気の沙汰ではない」「玩具会社の新人研修のブレストで出てきた案みたい」とバッサリ。時代の制約は無視できないし、何事にも準備過程が必要にせよ、日本には「何年までに有人宇宙飛行を実現する」という明確な目標なりビジョンが必要、と語りました。さもなくば、できることの範囲内でしか物事をイメージできない人間が増えてしまう、とも。
大貫美鈴さんの講演「世界の宇宙旅行をめぐる動き」では、概ね聞き知った内容が多かったものの、いくつかのトピックスは初耳で、勉強になりました。なかでも気になったのは、Review of United States Human Space Flight Plans Committee(通称「Augustine Panel」)へのXCOR社Jeff Greason氏の参加は民間での宇宙開発が重用視されている一つの顕れであること、バックアップクルーとしての訓練活動もまた(実際の宇宙飛行に負けず劣らず)素晴らしい価値を提供し得ること、OshkoshのAirVentureでScaled Compositesが280億円の資金調達に成功していたこと、ISUで宇宙旅行と宇宙カルチャーのワークショップが開催されていたこと、等。
橋本安男氏による講演「世界各国の有人宇宙開発と日本の立ち位置」では、有人宇宙飛行を先進国が有すべき「基本輸送インフラ」と捉え、同時にそれを米国一国にのみ頼ることの危険性が説かれました。日本国内での有人宇宙船開発を阻む要素として巨額の開発資金と人命リスクの二点を挙げつつも、米国が手を引きつつある?地球軌道活動に独自性(例:多人数型輸送の実現)をもってコミットすれば、その技術を民間移転することでオービタル宇宙飛行を「21世紀の戦略的産業」にできるのでは?とのこと。今年2月に、NTTナビスペース運営のWebアンケートで58%の人が宇宙旅行に「行ってみたい」と回答していたのは、ちょっと気になる数字ですね(回答総数は25,609票)。
山下雅道教授の講演「火星で生きる」では、Macの調子が悪かったらしく、うまくスライドを映せないハプニングに見舞われていました。講演の中身よりも強烈だったのは、蚕のクッキーを食べさせていただいたこと。味見はあくまでも自己責任で……ということでしたが、まぁ物は試しで食べたところ、それと言われなければ全く違和感を覚えないほど、普通のクッキーっぽかったです(やや甘みが足りないのが不満)。
宇宙少年団に出向中の岩本さんにご挨拶させていただいたり、SHUNさんからそらへ株式会社のナイスな名刺をいただくなどした休憩時間を挟んで、パネルディスカッションがスタート。それまで登壇していなかった、クラブツーリズムの浅川恵司氏と、三菱重工の川戸博史氏が、まず自己紹介を兼ねてそれぞれにショートプレゼンを行いました。浅川氏のお話のなかで、SpaceShip2は早くて今年12月に完成・お披露目、商業飛行は2010年後半にもスタートという最新情報以上に、南極旅行と宇宙旅行の顧客の共通点のお話に惹かれました。
- 経済的なゆとり
- 南極や宇宙 又は、気象、地理などの専門家ではない。
- 豊富な旅行経験(イースター島、ガラパゴス、アフリカ等の冒険的な旅行先などが多い)
- 南極大陸に上陸、南極点に立ちたい、宇宙に行きたいという思いが強い。
- 宇宙旅行に申し込みをしたり、検討している顧客の半分は南極に行っている。
(又は行く希望がある)
というのがその共通点だそうで。まぁ、曲がりなりにも二度に渡り南極半島まで旅した事のある僕は、立派な宇宙旅行予約予備軍になるのかなw 閑話休題。まず気になったのは、有人宇宙開発を論ずる際に必ずと言って良いほど登場する、命の大切さを巡る議論。秋山氏は、死人が出たら困るというのは「やらないための言い訳」に過ぎず、勘違いではないか、と述べました。橋本氏は、既に日本人をスペースシャトルに乗せている時点で同種のリスクを負っているし、安全は相対的なものであって、もっと科学技術を信用すべきだとも述べました。次に、例の二足歩行ロボットの必要性を巡り、大貫さんは「民間ならまだしも、国がやるべきこととは思わない」と発言。またヒューマノイドでなければ感情移入できないというのは、別の(人の形をしていない)ロボットなり宇宙機を作る人に対して失礼だ、とも指摘されました。それを受けて的川先生が仰った、人は人の形にではなく人が注いだエネルギーに対して感情移入するのだとの論には、対象がロボットであれ何であれ激しく同意。本題とは関係ないですが、的川先生と秋山氏が同い年ってのは意外に思いました。体型も髪の色も違うんだよなぁ……w
シンポジウム終了後は、懇親会には参加せず、@summerwindさん、@hadukiさんと近場のエクセルシオールで軽くお茶をしてからお開き。いやはや、先週のJAXA相模原キャンパス一般公開に引き続き、なんとも宇宙充(謎)な週末を過ごしました。