国立情報学研究所 平成21年度オープンハウス
著
昨日のことですが、国立情報学研究所の平成21年度オープンハウスに参加しました。目的はただ一つ、かつてNHK プロフェッショナル 仕事の流儀の出過ぎた杭は誰にも打てないという回で知った、MIT Media Labの石井裕教授による基調講演「独創・協創・競創の風土とタンジブル・ビット」。直前まで大手町にいたおかげで余裕をもって会場に着き、イントロダクションから聞けたのですけど、もう少し遅かったら座席を確保できなかったぐらい、多くの聴衆がかけつけた講演でした。
とにかくお話するスピードが早いうえに英語を使う率が高く(一文がほとんど日本語ではなく英語になったときには石井教授自身何度か苦笑していました)、しかしそれがかえって自分には良かったというか、そういったスタイルが話の中身の面白さを増幅させていた気がします。以下、気になったことをいくつか覚え書き:
- Alan Kay氏の言葉「The best way to predict the future is to create it」は覚えておきたい。
- 情報として何を残すべきかの議論もなく、情報をそぎ落として効率化したり標準化するのは危険。もしそこで感情的、情緒的価値が損なわれているとしたら?……確かに。
- そろばんについての話で、Physical Encodingというフレーズを初めて耳にしました。新鮮かつ興味深い。
- 途中、「私は営業ですけど」と言い放っていたのはジョークなのか、本音なのか、両方入り交じったものなのか。実際、研究費をスポンサーから集めてくる手腕というのは厳しく求められているのでしょうが。
- さまざまな研究成果を拝見するなかで、すごく直感的にではあるものの、確かにDigital/Physical Boundaryが希薄なところにその面白みだとか一種の可能性を感じさせられました。
- 多くの面で学生のほうが優れているため、尊敬を勝ち取るべく研究費のなかから卓球台を購入し、全員を打ち負かしたとかいう逸話、サイコーです。
- 飢餓、屈辱、誇り、情念。いずれもまだまだ自分には足りない要素。
- 2050年には石井氏は亡くなっていて、2100年には会場にいた全員が亡くなっている。その先、たとえば2200年にまで価値をもたらすために今できることは何か?って僕自身が考えてみると、途端に頭が痛くなってきますw
自分にとって最も印象的だったのは、石井教授がMedia Labに誘われ(Alan Kay氏らから口説かれ)、移籍した当時の思い出?話。求められたのはReboot、つまり再起ということであって、それまでの実績の延長上にこれから行うことを積み上げてくれるな、ということだったそうで。文脈的に考えればそうするのが自然だし、楽だし、効率も良いはずだけれど、Media Labはそれを求めなかったのですね。まったく新しいことを始める、つまりそれまで登っていた山を下山してしまって、また別の山の頂点を目指して登り始めた、と。そのお話を聞いた瞬間、今の自分にもきっと何かしらのRebootが必要だけれど、さまざまな理由をつけてはそれを実行に移せずにいる自分、に心から嫌気がさしました。なので、1時間ちょっとのお話を聞いた結果、非常に刺激を受けた反面、かなり落ち込んだのも事実。