アイシテル —海容—
著
伊藤実著『アイシテル』の前編、後編を一緒に買って来て、そして一気に読み終えました。最近テレビドラマ化されて少しは話題になっているのかな?とはいえ、自分が何をきっかけにしてこの漫画を知ったのかは既に覚えていないのですが。少し前に読んだ『新ブラックジャックによろしく』6巻も読んでてかなりブルーになったけど、こちらはもっと深いところにズシリと来る感覚。自分が親の立場だから、というのは少なからずあると思いますが……以下、出版社/著者からの内容紹介より引用:
私の息子が殺された。
いつもと同じ日のはずだった。たった10分間の母親の不在を除いては。下校時に行方不明になった7歳の清貴ちゃんが死体で発見されたのは行方不明になった翌朝。殺された我が子を受け入れられず呆然とする母親。やりばのない怒りと悲しみ、綻ぶ家族の絆。そんな中、被疑者として保護されたのは11歳の少年だった!!
全ての母親に捧げる、渾身の物語。
全ての母親
でなしに、全ての親が読んでおいて良いかもしれない。漫画で描かれているのとすっかり同じではないにせよ、似たような悲劇的な事件をニュースで目や耳にしてしまうような、そんな現代を生きる親は誰であれ。唯一?の救いは、残された人々がそれぞれに事件を乗り越えて生き始めるところまでが描かれている点かな。もっとも、前・後編というボリュームのなかでそこに到達するにはやや急展開が過ぎるように感じなくもないけど、それでも救いを僕は必要としたし、それだけに安心できたのだけど。まぁ、だからこそタイトルに「海容」の2文字があるわけなんですがね。僕はこの言葉、この漫画を通じて初めてその意味を知りました。許し許されること、は間違いなくこの漫画の主題の一つでしょうね。加えて印象に残ったのは、人が人を理解することの難しさと有り難さ。たとえ親と子の間であっても、まったく別個の人格を備えた異なる人間である以上、お互いに分かり合うことは完全にはできない。しかし、それでもなお分かりあおうとすることに価値があるというか、生きることの意味がある、と。