会社は2年で辞めていい
著
山崎元著「会社は2年で辞めていい」を読了。なんて書くと、また転職なんて考えてるの?と脊髄反射的に反応されそうだから書いておくけど、決してそんなことはありません。今の勤務先でやりたいこと・やるべきことはまだあるし、そもそも転職するつもりがあるなら、転職が完了するまで(こんな場所にそれらしきことは書かずに)隠し通すってば。僕が身を置く業界では特に人材の流動化が顕著なわけだけど、世の中的に転職に対するイメージが割とポジティブな方向で変化しつつある中、改めて転職のもつ意義であるとか、その効能について整理してみようと思ったのが動機で購入。前書きのなかで転職は、必要がなければしなくてもいいが、したくなくても必要になることがある
とあるように、決して能動的なものばかりが転職でないのが現実である以上、今は転職するつもりなんて毛頭ないという人(つまり僕だ)にも、本書を読んでみる価値はあるんじゃないかな。
著者の山崎氏は過去に12回も転職を繰り返した御方。それってさすがに多過ぎじゃないか?と一瞬思ったけど、タイトルを文字通りに解釈したうえで47歳という年齢を考えてみれば、決してそうでもないのかもしれない。僕自身はこれまでに3回(出向も数に含めれば4回)経験しているけど、山崎氏の言葉で一番なるほどと思ったのが、第六章にある自分の意思で自分の進路を選んだという充実感と、失敗は自分の責任にあるという、自分の運命に対する責任を自分で握るスリルの二点が、「転職の快感」の正体だ
とする説。常に一瞬一瞬が自らの選択の連続である以上、何も転職に限ったお話でもないですが……とても納得しました。僕の過去の転職はいずれをとっても正解だったと思っていて、接した人に恵まれたし、幸運にも恵まれたことは本当に有り難かったのですが、何より自分で選んだという事実を誇りに思っているんですね。自分の未来をコントロールすることの快楽が能動的転職行為とは表裏一体をなしていて、それはそれで素晴らしくもあり、同時に危険な存在でもあるのだろう、と思っています。ご利用は計画的に、ってヤツと同じかな(謎)。加えて、「時間」と「自由」と「お金」は、緩やかに交換可能だ
とする説(第一章)や、「自分」という一人の社員だけを使い、「自分の労働」という商品・サービスを売っている会社だと思い、これを経営する
という考え方(第二章)も参考になりました。
さて、僕はもうすぐ(でもないけど年内には)35歳を迎えてしまう。転職する場合の上限としてよく言われるのがこの年齢であり、また本書の帯には「35歳までに人材価値を築け!」とありました……そんなわけで微妙に焦らされる今日この頃。人材価値を決める三要素として本書に登場する顧客、スキル・能力、対人能力のどれをとっても中途半端このうえないのだけど、いちど棚卸しをしてどこがどれだけ足りないか、整理しなくては。