よくわかる取締役になったら事典
著
「よくわかる取締役になったら事典 新会社法完全対応版」を読みました。本書は、取締役/執行役員という役職に関して発生し得るさまざまな問題に対し、平成18年5月から施行されている会社法を基に、正しい対応を教えてくれるというもの。個々の問題というか設問につき1〜4ページ程度が割かれており、本文中は法律等に疎い僕のような人間にもわかるレベルで解説しつつ、回答の論拠として必要な会社法の条文はしっかりページ下部に引用・紹介されています。たとえば、「取締役会は、どのくらいの頻度で開かなければならないのか?」という問いに対しては、会社法363条2項を紹介のうえ、それを踏まえて著者の浜辺氏がコメントしています。
全部で267もの設問が9つのパートに整理されているのですが、その最初のパート「取締役の就任」の一番目の設問として、取締役の向き・不向きを挙げた項目が興味深かったです。なかでも、責任感に関する項で単に自分の担当分野だけでなく、幅広い問題意識をもって会社を経営していこうという心がまえが必要
との指摘は、耳が痛いというか、とにかく改善しなくてはいけないなぁと。
自分は今の勤務先では取締役を仰せつかっていますが、法的なタテマエとしては「経営のプロ」であるハズにもかかわらず、自分の実態としては従前と変わらず単にいちエンジニアに過ぎない……という認識、自己評価を言い訳にして、責任の重大さからの逃避にも近い意識が心のどこかにありました(それが好ましくない状態であることも知りながら)。その点は、自覚が足らないとの批判があれば甘受するほかありません。
ただ最近になって、このままではいけないという気持ちが焦りとともに高まりました。取締役に必要とされる能力や意識を一足飛びに獲得することは無理にせよ、株主総会で選任された以上、会社から経営を委任されている以上、(日常業務で必要とされる専門分野とは別に)そうした経営や法律といった分野にもっと真摯に取り組まなければ……と思ったのです。本書を読んだきっかけは、手始めにそもそも取締役とは何か、その権限や責任は法的にどういった内容で規定されているのか、を改めて学びたかったから。「すぐに使える中経実務Books」というシリーズ中の一冊ですが、確かに実用性は高く、買って(読んで)正解だったと思います。