秀之の誕生
著
助産院での出産を目指し、夫婦ともども努力を重ねてきましたが、既に予定日を2週間近くも超過し、その希望を叶えることはできなくなってしまいました。しかも某総合病院に今朝入院したばかりの嫁さんから、昼ごろ携帯に連絡が入り、曰く帝王切開が必要になってしまったとのこと。診断の結果、羊水が減っているのと赤ちゃんの心音が弱い時があるのとで、できるだけ早く母体から出す必要アリなのだとか。驚きと不安に悩まされつつ会社を早退して病院へ……なんとか手術前に間に合い、担当の先生から直接お話も伺えました。
手術は午後2時過ぎから始まって、その1時間後には無事生まれてきた子供と少しの時間だけ対面。いやぁ小っさいなぁ!!写真を何枚か撮って各所に電話連絡。ところがその後先生から話があり、検査のために未熟児室に入院してもらう必要があるとのこと。現時点ではどこが悪いとも判っていないとはいえ、再び不安モードに入りながら、とにかく各種手続き。その1時間後(午後4時過ぎ)には、嫁さんもようやく手術室から出てきました。疲れてそうだったけれど、比較的明るい表情に安堵。
子供のほうは、その後「気胸」という診断がなされました。よく起こることらしいのですが、生まれて急に激しく息をし過ぎて肺が破れてしまい、空気が身体に入ってしまったとのこと。特にほかに異常はなく、2〜3日治療をすれば大丈夫なのだそうで、安心しました。酸素濃度を少し上げた(28%)保育器の外側から、しばらく眺めたり撫でたりしてから、看護婦さんにお願いして一緒の写真を撮っていただきました。両親しか未熟児室内には入れないので、お義母さんと僕の母親はガラス越しに対面。嫁さんの病室に戻り、デジカメの画像を見せながら報告、予てより相談していたとおり「秀之」と命名することを確認して、その日は病院を後にしました。
秀之へ
いつの日か君がWebというものを知り、父親が君の生まれた日の出来事について書いたこの文章を発見する日が来るでしょう。生まれて来てくれて、ありがとう。梅雨の中休みの、曇り勝ちで蒸し暑いこの日に、君のお母さんはよく頑張ってくれたよ。この世界には、不安や混沌が多く存在するけれど、それ以上に素晴らしいと思えることが確かにあります。だからこそ君のお母さんや僕は生きてきたし、君も生まれたわけです。その事実を君が心から理解できるのは、いつのことになるだろうね。でもきっとその時は来るし、それまでは辛いことも沢山あるかも知れないけれど、共に生きていこう。生きて欲しい。それと、多くの人々が君の誕生を祝福してくれたことを忘れないで。いつまでも。