進化しすぎた脳
著
池谷裕二著「進化しすぎた脳 中高生と語る『大脳生理学』の最前線」を読了。この本は、仕事でいつもお世話になっている出版関係の会社のとある編集者さんがオススメしてくれた本です。つまり、予てより大脳生理学に特別興味があって買ったというわけではないんですね。脳の研究をアメリカで続けているMakに著者を知っているか聞いてみたら、サイエンスに載った氏の論文は読んでいたらしい。
タイトルにもあるように、中高生に対して大脳生理学の最前線を語る、という点がミソの本だと思いました。真に最前線に位置する研究者でなければ語り部役はもちろん務まらないし、中高生の理解可能なレベルに落とし込んで話せるだけの深い理解・幅広い知識が必要となります。インプットとアウトプットの能力のバランスが取れているということ……池谷氏は、それを難なくこなしているように感じられたのですけど、きっとそれは凄いことなんだろうなと思いました。大脳生理学の部分を自分の業務内容に置き換えたとしても、果たして僕に同じような真似ができるだろうか?悔しいけれど、難しいと思います。ちなみに僕がたとえ「後追い」でも兎に角Blogを続けている理由の一つには、どういう形であれアウトプット能力の鍛錬をしたいというのも、あるんですけどね。
本書を読んだことで、確かにそれまで持っていた脳に対するイメージは変わりました。いや、変えざるを得なかったというのが正直なところかな。脳と身体は不可分ということ、従い身体と心も不可分だということ。あいまいに情報を蓄えることによって初めて一般化、汎化が可能になっているということ。近年それらが科学的に捉えられてきたというのは実に興味深いことです。最後に著者は自らの講義の感想のなかで脳を理解しようなんて、そもそも傲慢でおこがましいチャレンジだと僕は感じはじめている
と述べていますが、大脳生理学に携わる他の研究者達の感想ってのも聞いてみたいものです。究めれば究めるほど、皆一様にそういうことを感じたりするのでしょうか。