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Re: ウェブアクセシビリティマークの提唱について

有限会社時代工房が、ウェブサイトへの障害者によるチェックという付加価値の推進を図るマークの提唱をしていました(有限会社時代工房 - ウェブアクセシビリティマークの提唱について)。提唱するのは自由なわけですが(自分も「Webアクセシビリティ・ファースト」という一種のスローガンを提唱していますし)、障害当事者によるアクセシビリティチェックが付加価値たり得るだろうか?という部分で、自分は強く違和感を覚えました。障害当事者がチェックすることでWebコンテンツの何かを改善できるとすれば、それはアクセシビリティというよりむしろ、担当した障害当事者のもつ障害(「障害」と一言で言っても、その種別や程度はさまざまと認識していますが)なり使用する支援技術に特化した、ユーザビリティではないか?と。

ウェブアクセシビリティ関連のマークは、ウェブアクセシビリティの総本山WAIが提唱するWCAGのマークをはじめ、さまざまな団体や自治体が提唱するものが多数ありますが、弊社が提唱するマークは、アクセシビリティの確保を宣言するマークとは少し異なり、ウェブサイトの制作に障害者が関わっていることをアピールすることを主目的としたマークです。

上記の主張につきましても、(逆の見方をすれば)Webサイトの制作に障害者が関わらなければ十分なアクセシビリティを確保できない、ないし確保が難しいかの誤解を招く恐れを憂慮します。アクセシビリティのチェックに障害当事者が参加することで、チェック結果に一定の信用なり信頼を担保させることは確かに可能でしょう。しかし、障害当事者がチェックしなければアクセシビリティ上の問題点を網羅できないというわけではありませんし、一定の知識があれば誰でもある程度は(そう、「ある程度は」)客観的なチェックが可能のはずで、WCAGのようなガイドラインはそのために存在するのだと認識しています。その点は、時代工房の方も理解なさっているからこそ「付加価値」という表現をなさっているのでしょうけれど......やはり、冒頭で述べた違和感は拭えません。ウェブアクセシビリティ・マークのサイトでは、

「ウェブアクセシビリティに配慮する」ということは、障害者や高齢者を含めた利用者を想定して、誰にでも使いやすいようにウェブサイトを構築することです。

としながら、なぜ特定のユーザー=障害者によるチェックを喧伝しなければならないのか。誰にでも使いやすいサイトを目指すならば、不特定のユーザー(もちろん障害者や高齢者も含む)によるチェックをこそ実施すべきではないのか。結局のところ、ウェブアクセシビリティマークは、アクセシビリティ対応=障害者対応という、古くからの見方や捉え方をかえって助長し強化してしまう(「Webアクセシビリティ」のリブランディングで書いたような、誤った認識を広めてしまう)のではないか。そんな不安が拭えません。果たしてこのマークが今後普及するかどうか、まったくもって予想できませんけれど、願わくばWebアクセシビリティの健全な普及の一助となることを。

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