文字サイズ変更ウィジェット
著
456 Berea StreetのRogerが、Scrap text resize widgets and teach people how to resize textという記事のなかで、文字サイズを変更するためのウィジェットを実装したサイトの多くは、本質的な問題を隠すためのバンドエイドとして使ってるんじゃないの?みたいなことを書いていて、なかなかうまい表現かもしれないなぁ、と思いました。バンドエイドをバンドエイドと理解して使っているならまだしも、その認識すらなく単にトレンドというかファッションとして採用している向きも世の中的には存在しているようで(「○○のサイトで採用してるんだからウチも......」みたいな)。個人的には、以下の理由からこのUIの存在を微妙だと思っています。
文字サイズ変更ウィジェットは、閲覧のための「機能」ではあっても文書固有の「コンテンツ」ではありません。その一点において、マークアップすべき情報/対象とは思えません。( [ 2017-07-15 追記 ] この項目に書き記した意見は撤回します)- ブラウザ側の実装がわかりにくいからこそWebページの表示領域に文字サイズを変更するためのUIを明示的に用意するのだ、という考え方は理解できないわけではないけど、逆に考えればユーザーの(ブラウザの操作方法に関する)学習機会を奪うUIだ、ともいえます。所詮その独自UIが有効な範囲は、同一ドメイン内に限定されたりするわけで。
- 文字サイズ変更ウィジェットは多くの場合、JavaScriptが有効であることを前提としています。ウィジェットそのものがJS有効時にのみ表示されるよう実装されていればまだしも、そうでない残念な実装というのもあって、JSが無効な環境では無用の長物と化している場合を見かけます。
- 仮に「大」「中」「小」のようなラベルのボタンが並んでいたとすると、それぞれを選択した際に文字サイズがどれだけ変化するか、が明示的ではありません。また実装とユーザーの設定次第では、文字を大きくしたくて「大」を選んだにもかかわらず、逆に小さくなるという矛盾した結果も起こり得ます。
- 多くの文字サイズ変更ウィジェットでは、変更量に上限や下限があり、そもそもユーザーの求める文字サイズを提供することは難しいだろうと思います。無段階的に、かつ上限も下限も設けないようなUIなり実装であれば、ユーザーの望む文字サイズを提供しやすいと思うのですが。(その点では、かつてお世話になった旅行会社のQuark Expeditionsのサイトが採用している実装は割と好きですね。単にプラス/マイナス記号のみの表記ですがtitle属性で「Increase Font Size」「Decrease Font Size」という意味を補足しており、文字サイズは5%刻みの増減が可能で、上限はありません。一定のサイズを超えるとレイアウト上文字が重なり合って可読性が著しく下がるし、JS無効時ですらこのUIが表示される点はアレですが。)
- 文字サイズ変更ウィジェットは大抵、(OperaやIEのズーム機能のように)画像のサイズまでをも変更してくれるわけではないので、画像中に書かれている文字の拡大/縮小をも期待したユーザーには、混乱をもたらすかもしれません。
そんなわけで、僕としてはTeach a Man to Fish (or How to Resize Text)にあるような動画をつくらないまでも、「ヘルプ」とか「このサイトのご利用について」みたいなページで、画面キャプチャを豊富に織り交ぜながら、主要なブラウザにおける文字サイズ変更法を解説するのが良いのではないかなぁ、と思っています。ユーザーからすれば、他のサイトでも応用が利きますので。
もっとも、各ブラウザベンダが文字サイズ変更UIをもっとわかりやすい位置に実装してくれれば、その手の解説の必要性も低くなるかもしれませんが......どうなんでしょうね。IEではバージョン6までは最大から最小までの5段階でしか文字サイズを変更できなかったのが、IE7からはズーム機能が備わって(そして初期状態では今まで以上に文字サイズの変更方法を隠して)、今後はズームを使って欲しい、ということらしいのですが、ズームはズームなりに課題(何)があるわけで。