中部山岳国立公園 北アルプストレイルプログラム シンポジウム(in富山)1日目
阿曽原温泉小屋の泉さんが、かねてよりご自身の登壇を予告・周知されていた、中部山岳国立公園 北アルプストレイルプログラム シンポジウム(in富山)の1日目に現地参加しました。会場は、前日にも訪れていた黒部市芸術創造センター セレネ美術館。前半の事例紹介に限り、Webでの傍聴も可能なイベントでしたが、後半の討論もちゃんと聞きたかったし、いちおう阿曽原マニアの一人のつもりなので笑。
持続可能な登山道の維持......ともすればシンプルな課題に聞こえてしまうけれど、いかにそれが複雑で多面的なものかを考えさせられた一日となりました。決して解決の容易な課題ではないけれど、自分なりに理解を深めることができて満足。もちろん、事例紹介のトップバッターを務めた泉さんのご講演も、たいへん面白く聞かせていただきました(やっぱり人を集めたり結束を強めるのにお酒は大事ですね)。
登山道の維持にまつわる課題は多様で登場人物も多く、それだけ利害関係も複雑に映りましたが、山域固有の植生と入山者数、ルートの危険度は相関しているので、安全確保と環境保全の2軸のどちら寄りかに基づく各種の交通整理がポイントになりそう。あとは人やお金の動かし方において(行政か民間かの二択でもなく)いかに柔軟性を確保できるか、かなぁ。
以下、気になったこととか思ったことなど:
- 入山者からの入山料の徴収というアイデアは、クラウドファンディングと比べハードルが高い。なぜなら条例を作らないといけないし、登山口すべてで有人対応する必要がある(富士山は登山口が限られているからこそ徴収しやすい)。
- クラウドファンディングで調達した資金なら、その使途を柔軟かつ弾力的に決めることができるというのは、メリットとして極めて大きいように聞こえました。これが仮に国のお金、税金由来のものとなると、なかなかそうはいかない。
- 泉さんが盛んに主張されている「山で食べていくために」という点については、やはり定期的な業務と不定期の(スポット的な)もの、それぞれの業務を時期・山域をまたいで柔軟に組み合わせられる仕組みが必要そう。
- ネパールから招聘したシェルパのおかげで一ノ越〜雄山の登山道が整備されていたとは初耳。そして彼らの技術はそう簡単に日本人が習得できるものではないと伺って、さらに驚きました......そういうものなのか。
- 「トリアージ」という言葉を、このシンポジウムの文脈で耳にすることになろうとは、びっくり。確かに、どこの登山道をどのように修復するか、それくらいシビアに優先順位づけが必要ということか。
- ボランティア活動の意義はその参加障壁=ハードルの低さ。危険な地域ではないからこそ成り立つ、という特性は言われてみれば確かに。地域や作業内容の危険度に紐づく定義、ゾーニングが必要かつ有効。
- 入山者からルート情報を収集・共有できないかと思ったら、やはりすでにヤマップが取試験的にり組んでいたのね(GPS情報つきの画像をルート上に紐づけることができるらしい)。自治体に情報提供されているそうだけど、ヤマップに登録していない一般人が見れないとなると、それはそれで囲い込みに映ってしまう。
- 登山道ごとの台帳整備について、技術は既にある、データも個別には存在する、しかし繋ぎ込むオペレーターが不在......という課題は興味深い。関連して、気候変動で地形がどんどん変わり得る昨今、台帳がないと差分が取れずどう復元すべきかわからないという指摘も、なるほどという感じ。
[ 2025-02-20 追記 ] 泉さんが、シンポジウムの後日談として2つの記事(伝え切れなかったでしょ?・・・、そして続き)を掲載していました。最初のほうに出てくる東京からワザワザ来てくれていた御馴染さん
って、たぶん私のことじゃないかな〜って思いながら読みました笑。確かに、「時間切れっぽくなかったですか?」ってお尋ねしていたので。ありがとうございます!