FTCとアクセシビリティオーバーレイベンダーの合意に対するコメント

2025年1月20日

FTCとアクセシビリティオーバーレイベンダーのあいだで取り交わされる合意（FTC Order Requires Online Marketer to Pay $1 Million for Deceptive Claims that its AI Product Could Make Websites Compliant with Accessibility Guidelines）について、Beware of AI Accessibility Promises: US Federal Agency Fines an Overlay Company One Million Dollars - Law Office of Lainey Feingoldで詳しく紹介されていたのですが、そのなかで本件に関し誰でもFTCにコメントできることを知りました（期限は2月5日）。

私もコメントを送ったところ、Regulations.govに掲載されました（コメントID：FTC-2025-0002-0037）が、以下にその全文を転載しておきます。ほかに寄せられたコメントを斜め読みしますと、100万ドルという金額では不十分という指摘が多くなされていますが、金額の多寡については私はスルーしました。

As a professional who has been in charge of web accessibility for over 20 years and as one of the signatories to the overlay fact sheet [1], I support the FTC's decision.

I hope that the decision will raise awareness of the fact that, at the current level of technology, compliance with WCAG cannot be achieved mechanically and automatically, but requires works by humans.

I also expect overlay vendors to stop deceptive marketing and branding and ultimately rethink their business models.

I believe that the customisation/personalisation features enabled by overlays should essentially be provided by web browsers (user agents).

If web browsers implement such features, users can customise/personalise web sites, not just some websites, but ALL sites, without fear of their privacy being violated.

So, I hope that the decision will also encourage the evolution of web browsers in the future. Web browsers should now evolve to be more proactive in helping users browse, in terms of accessibility.

[1] https://overlayfactsheet.com/en/

日本語にするなら、以下のような感じです：

20年以上にわたりWebアクセシビリティに携わってきた専門家として、またオーバーレイファクトシート[1]に署名をした一人として、今回のFTCの判断を支持します。

今回の判断により、現在の技術レベルにおいてWCAGへの適合が機械的かつ自動的には達成し得ず、人手を介する必要があるという事実が、広く認知されることを期待します。

また、オーバーレイのベンダーが欺瞞的なマーケティングやブランディングを中止し、究極的には自社のビジネスモデルを再考することを期待します。

私は、オーバーレイが実現しているカスタマイズ/パーソナライズ機能は本来、Webブラウザ（ユーザーエージェント）によって提供されるべきと考えています。

Webブラウザが、そのような機能を実装すれば、一部のWebサイトだけではなく、あらゆるサイトを対象に、プライバシーを侵害される懸念もなく、ユーザーは個々のサイトをカスタマイズ/パーソナライズできます。

従い、今回の判断が、将来のWebブラウザの進化を後押しするものにもなることを、私は期待します。Webブラウザのベンダーは今こそ、アクセシビリティ観点からユーザーのブラウジングをより積極的に支援するよう進化すべきです。

[1] https://overlayfactsheet.com/ja/