立山の自然を還しに行く
著
昨年から、実家に放置していた私物の整理を徐々に進めているのですけど、今年の春先に発掘したのが、写真にある品々。古くて錆びた、小さなフォションの紅茶缶に収められていたのは、無色透明の水と僅かに沈澱した泥、それに小石を収めたプラスチック製のフィルムケース。一緒に缶に入っていた千葉銀行のメモ用紙には、汚い字で次のように記されていました:
夏のりょこう
S.85 8/6
ぼく6年生
富山県
立山のゆきどけ水
そう、私が小学6年生のとき家族で立山を訪れた際、禁止されているとは知らず自宅まで持ち帰ってしまった雪解け水や小石を、タイムカプセルの要領で保管していたんですね。悪気はなかったにせよ、立山の大自然に感動した結果、その一部でも自分の手元に置いておきたいっていう、一種の所有欲が湧き起こった結果なのでしょう。
あるいは、もしかしたら2度と立山を訪れることができないかもしれないという、謎の危機感からワガママが爆発してしまったのかもしれません。まさか30代半ばから山歩きが趣味になり、40代に至っては、ほぼ毎年のように立山・黒部エリアを訪れるにようなるとは、当時は想像すらしませんでしたが。
ともあれ、立山黒部アルペンルートは中部山岳国立公園内に位置しており、動植物はもとより石も持ち帰らないよう利用上のマナーが定められているわけで。近く、還しに行こうと思います......40年近くもの月日が経ってしまったけれど、マナーを守らなかった贖罪として。