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宇宙ベンチャーの時代

宇宙ベンチャーの時代~経営の視点で読む宇宙開発~』を読了。前から気になっていた本ですが、最近になって日替わりセールで安くなったのに釣られ、Kindle版を購入していたものです。ちなみに著者の1人の後藤氏は、私と同じく国際宇宙大学(ISU)のSSPに参加した経験の持ち主らしい。

俗にニュー・スペース(NewSpace)と呼ばれるトレンドや、国内外の宇宙ベンチャーについて俯瞰するには、コンパクトにまとまっていて良い本だと思いました。業界動向の激しさゆえという理由もありますが、書籍の宿命として最新動向を反映した内容ではない可能性については、単なる釈明のみならず章単位で割としっかり注釈(一次情報源のURLなど)が記されていたのも好印象。

初めて聞くような話もそこそこあったし、ちょっと引っかかるようなくだりもあったけれど、全体的に面白かったです。面白かった点の一例を挙げるなら、オークションの持つマーケティング側面についての気づき。これはブルー・オリジン社が最初のフライトの座席を売りに出したときのエピソードなのだけど

各顧客の支払い余力や、ボリューム価格帯。地域別傾向等々の情報を、一気に集めてしまったはずです。

というのは、なるほど考えたことがなかったです。そもそもオークションというのが私には縁遠い存在で(参加したことは皆無)、どこまで参加者の情報が開示され得るのかとか知らないのもあるけれど......興味深い。あとは、これは多分に日本の国民性とか文化的背景に由来してそうだけど、リスクテイクなりリスクヘッジに対する考え方の日米間におけるギャップかな。著者の主張は、そのギャップをどう埋めるべきかみたいな話に割と集約できそう。

第九章の「リスクとどう向き合うか」がまさにそういう話で、顧客、保険会社、従業員、政府、宇宙機関、証券取引所・証券会社・監査法人、投資家、経営者にステークホルダーを分類のうえ、それぞれに負うべきリスクだったり、日本の宇宙産業を一層振興するために必要な提言がまとめられていて、参考になりました。リスクをテーマに各ステークホルダーとどのようなコミュニケーションを取るかが、宇宙開発企業における広報戦略の1つの考え方として有効かもしれない。

なお1箇所、誤字っぽいのを見つけました。第六章のなかで「2014年央」という表記が出てきますが(SpaceXのブースター着陸成功の見通しに言及したくだり)、正しくは「2014年中」でしょうね。また、書籍内の参照において「上記」と「右記」という言い回しが混在していたのは若干、良くない気がしました。縦書きだったのでどちらかといえば「右記」が好ましいでしょうが、いずれも物理的ではあるので、「先述」が良いかしら。

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