Re: アクセシブルなEPUB出版物の制作における課題
著
日本出版学会 春季研究発表会ワークショップの録画、アクセシブルなEPUB出版物の制作における課題——日本出版学会学会誌を事例にしてがYouTubeで公開されていたので、拝見しました。しばらくお会いしないあいだに植村要さんのご所属が中央大学に変わっていて? びっくり......というのはさておき、発表者の方々のスライドも公開されており、大変ありがたいです。
感想としては、アクセシブルなEPUB出版物に関わるステークホルダーそれぞれに課題があり、なおかつ個々の解決に向けては「卵が先か鶏が先か」みたいな現状があって、まぁ一筋縄にはいかないですよねという。ただそれはJIS X 23761の制定より前から変わらず存在していた状況で、制定のおかげでますます浮き彫りになったというか、深刻になったというか、本気で取り組まないといよいよ厳しそうな印象。
また今回、制作ツールベンダーとしてアドビが参加されており......その発表内容自体は、EPUB出版物というテーマから離れたところで「アクセシビリティがんばってます」的アピールにとどまったのは、残念でした。しかし、質疑応答のなかでは前向きなご発言が聞けましたので、あとはReading Systemベンダーをいかにして議論に巻き込むか、が重要になってくるように感じます。
結局のところ、EPUB出版物の制作と流通に関わるステークホルダー全員が、WebなりWCAGに対する理解を深めないと、画像の代替テキストはいつ・誰が書くのかみたいな論点ひとつ取っても前進させにくいのではないかしら。とはいえ、今回発表された調査研究が端緒となり、課題解決が加速することを個人的には期待したいです(植村八潮先生が質疑応答のなかで「隗より始めよ」とおっしゃっていましたが)。