父の免許返納
著
昨年末のことですが、父が運転免許証を自主返納しました。「上級国民」なる言葉が一躍バズワードになる契機となった、2019年に起きた池袋での暴走事故を引き合いに出すまでもなく、高齢ドライバーによる痛ましい自動車事故は枚挙に遑がないように感じるこのご時世。大きな事故を起こすことなく返納できた父を、私はとても誇りに思います。
時期は覚えていませんが、返納を提案したのは上述の池袋での事故より前まで遡ります。その時期を境に、帰省のつど駅まで父に車で送り迎えしてもらっていたのを止め、バスを利用するようにしてきました。そのいっぽう、生活の足として両親が車を頼りにしていることは知っていましたし、アルペンラリーに出場経験があるくらい父は運転好きでしたから、あまり強く返納をお願いはしてきませんでした。
何より私自身、これまでの人生において父の運転にどれだけお世話になってきたかを思うと、彼から運転を「取り上げる」ようなことはできなかったのです。塾への送り迎え、夏休みの楽しみであった家族旅行、大学生になってからも人力飛行機の試験飛行などに協力をしてくれた父。免許を持たない自分は父の車好きを利用し、また依存しすぎてきた......その点で正直、かなり苦悶した時期があります。
ともあれ、昨年末に免許は返納、車もディーラーに引き取ってもらったことで、一件落着。これを記念して、某サービスにて運転卒業証書なるものを作成し贈呈しました。さすがに出来合いのものでは味気ないように感じたので、私の家族全員で署名のうえ手渡しましたが、喜んでもらえて何よりです。長年の運転、本当にお疲れさまでした。