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総合生存学

総合生存学』、思ったより読み応えがあって(実際ページ数が結構あって)、読み終えるまでだいぶ時間がかかりました。ただ、全20章ある各章ごとに振り返れば物足りなさを感じる章もあって、要は広く浅くという構成&内容。まぁしかし総合生存学なんていう究極の?学際領域を一冊の本にまとめるとなれば、然もありなんとは思います。ひとまず線を引きまくった中から厳選して、覚え書きしておきます。

人類を相対化する作業が大切である。

p.6より。これ実は、宇宙開発を進める上でも極めて有効かつ重要なフレーズだなと思い引用しました。地球の出とか、ペイル・ブルー・ドットなんかはまさに、人類を相対化させるのに十分意義ある成果だったのではないかと。残念ながら、ロシアのウクライナへの侵攻問題なんかを見聞きする昨今、相対化が十分に浸透し機能しているとは言い難いのだけれど。

現生人類が存在していない可能性のある10万年後の未来を,現代の人類が予測し責任を取ることは不可能なのである。

p.61より。これはフィンランドの高レベル放射性廃棄物最終処分場「オンカロ」に言及した文脈で登場するくだり。10万年間ものあいだ地中深くに埋めておく想定なんだそうだけど、可否とか是非はさておいて、それだけ長いタイムスケールのプロジェクトを計画し、かつ実行に移していた事実に、ちょっと感動してしまいます。これが実行できるなら、将来の太陽の膨張(数十億年先)に備えて、今から宇宙移住を考えてもまったく不自然ではない。

系外へのエントロピーの大きい物質の排出は環境破壊に対応し,また系内のエントロピー削減は富の蓄積すなわち経済成長に対応する。

p.106より。出たなエントロピー!!この単語に環境とか経済を扱う文脈で出くわすとは、ある意味では感動的ですらあります。上記より手前の経済は解放系であり,結果的に非平衡状態とかも含めて何かこう、ビリビリ来ますわ。咀嚼しきれている自信はないので、この辺りも個人的に深堀していきたい領域であります。

グローバリゼーションは,人々に大きな機会を提供する一方,現実に受ける恩恵と,負担しなければならないコストの不均衡性が指摘されている。

p.268より。最近思うのは、自分が人生の多くを捧げてきたつもりの宇宙開発とインターネットが、グローバリゼーションを加速させてきたことの功罪。そして上記のメリット・デメリットに限らず、グローバリゼーションがさまざまな不均衡性を世にもたらしているように感じていて......すごくモヤモヤしています。個々人が持つ空間的、時間的な意識の拡張性におけるギャップっていうか? いずれ言語化して、ちゃんと吐き出したい。

ビジネスを構成する個々のパーツが細分化・専門化されればされるほど,実際のビジネスの執行つまり意思決定にはそれらの専門化したパーツを十分に咀嚼して繋ぎ合わせる能力,言い換えれば総合生存学の習得が必要となる。

p.307より。全体は部分から成り、部分は全体を求める。要素還元主義的に部分を追い求めれば求めるほどにコンテキストが損なわれるものだから、逆説的に全体を強化しなければならない。それって、これまで生きてきた中で嫌というほど痛感してきた真理だと思うし、その意味では「またか」とも思うけれど。それでも、やっぱり大事なことだなって思えました。

できあがって教科書などに載ってしまった「昼のサイエンス」と,まだまだ言語化されていず暗黙知に過ぎない「夜のサイエンス」。

p.377より。「昼のサイエンス」と「夜のサイエンス」、どちらも初耳で新鮮でした。すごい表現だな、とも思いましたね。震える。

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