日本出版学会 出版アクセシビリティ研究部会「学術情報・コミュニケーションのアクセシビリティ」
著
2月24日の覚え書き。無料で誰でも参加できるっぽかったので申し込んでいた、日本出版学会 出版アクセシビリティ研究部会「学術情報・コミュニケーションのアクセシビリティ」に参加しました。注目は第一部の報告「学術情報・コミュニケーションのアクセシビリティをめぐる現状:学協会を対象とした調査から」だったのですが、厳しい現状を認識する良い機会になりました。
同じ調査をもとにした発表が、先行して昨年11月の情報メディア学会 第23回研究会で行われており、その予稿(PDF形式)を閲覧できます。調査は日本学術会議協力学術研究団体の1,958団体を対象としたもので、調査期間は2021年8月30日〜9月13日、有効回答数は315だったそうです。今回の配布資料の「考察と結論」より「(1)アクセシビリティ対応の有無」の項から引用しますと
- 紙媒体で学協会誌を発行している269団体のうち、アクセシビリティ対応を「全くしたことがない」団体→248団体(92%)
- 学協会の研究大会を開催している313団体のうち、情報保障を「全くしたことがない」団体→285団体(91%)
- 回答のあった315団体のうち、学協会ウェブサイトのアクセシビリティ機能の整備を「特に何もしていない」団体→295団体(94%)
- 「紙媒体の学協会誌」、「研究大会」、「学協会ウェブサイト」のすべてにおいて、アクセシビリティ対応や情報保障を「全くしたことがない」、「特に何もしていない」と回答した学協会は225団体
だそうです。障害当事者が学会に多く(ないし積極的に)参加していないから改善を要望する声が上がらないのか、それとも現状が門前払いに近い状態だから障害当事者が学会に参加しない(できない)でいるのか......いやしかし、想像以上に厳しい印象を受けました。予算ガーとか担当者への教育ガーとかいう以前に、アクセシビリティの重要性がほとんど認知されていなかったんですもの。
とはいえ、今回の調査結果をきっかけとして学術方面で認知が進み、徐々に取り組みに着手されることを期待したいところ。それぞれが個別に動くのでなしに、誰(どこ)かしらわかりやすい旗振り役が先導したほうが良さそうですが、それは一体誰(どこ)であるべきなのか、というのが最後までわかりませんでした。
途中JIS X 8341-3への言及もありましたが、いきなりハードルを上げることなく、できることから進めていただきたいものです。障害者対応・高齢者対応というより、どちらかというと広く社会全体と「知の共有」を推進する、みたいな文脈で。それで学会が少しでも盛り上がって、会員数が増え会費からの収入も増えれば、UDトークの利用料を含め必要経費を捻出しやすくなるでしょうし、好循環。まぁそんな単純に事は運ばないでしょうけど......。