実務家ブランド論
著
待てど暮らせどKindle化リクエストを何度回送ってもKindle版が出ないものだから、仕方なく紙版を買って読んだのに、割と最近になってKindle版が出て悔しさ爆発の書籍『実務家ブランド論』について。いちおう自分も実務家の一人であり、ブランディングについて人前でお話しすることがある(来月もその種のセミナーを再演する)立場なので、読みました。
私が33年かかってたどり着いたブランドの定義、それは「妄想」です。
本書で一番引っかかるのはここ。その言葉にはどうもネガティブな印象があり、実際、辞書を引くと「根拠のない誤った判断に基づいて作られた主観的な信念」とある言葉ですからね。正直、賛同できません。ただ、あえてそう定義した意図だったり、「イメージ」という定義を避けた理由については、理解できました。でもやっぱり
「ブランドづくり」とは、すなわち「妄想づくり」です。
......なんて言い切られてしまうと、イヤイヤそういうことではないでしょう、と反論したくもなります。組織であれ商品・サービスであれ、「ありたい姿」と「実際にどう認知されているかのイメージ(=ブランド)」のギャップを最小化するプロセスを、そんな言葉で表現されたくないんですよね......一理あったにせよ。
p.165に出てくる図14も、個人的に引っかかりました。ブランドが、情報と接点と貯金箱の3つの掛け算から成る、という図です。自分の捉え方では、情報と接点の掛け合わせがすなわち貯金箱でありブランドだと思うのですけど。いっぽう、深く頷かされたのは
私は、この激しい競争社会を生き抜いてきた企業や商品には、たとえ凡人企業・凡人商品だとしても、「約束(ブランドプロミス)」となる要素が必ずあると確信しています。
というところ。なぜ生き抜いてこれたか=選ばれ続けたのか、はまさに差別化要因でありファンとの約束そのものだと理解しています。それが未来永劫、有効であり続ける保証はないにせよ、大切にしたい、大切にすべきだとも思います。さておき、ややB2Cに寄った印象はあれど、アカデミックぽさのない、実に現場の担当者目線のブランド論として、大変わかりやすかったです。