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日本宇宙開発夜話

待てど暮らせど一向にKindle版が発売されないので(もちろん単に待っていただけではなくKindle化リクエストもしていた)、仕方なく紙で買って読んだのが『日本宇宙開発夜話』。全53話からなるエッセイ集、なのだけど、日本の宇宙開発の歴史について網羅的に読めるものと勝手に期待していたら大間違い、だったみたい。

本書は本格的な歴史書を目指したものではない。気軽に宇宙開発の歴史の一面をのぞいてみてほしいという素朴な思いから生まれたものであることでその点はお許し願いたい。

と「おわりに」にある通りで、どのエピソードを拾っているかは4名の共著者の皆さんの主観に依るところが大きい模様。というのはさておき、全体的に非常に面白かったし、一話一話が短いゆえに読みやすかったです。個人的に興味深かったくだりはまず

山之内理事長は就任時の挨拶で、「失敗の克服もまたチャレンジである。国民に向けてのコンサートで、いま国は指揮者、皆さん職員は演奏者、自分はコンサートマスターとしてここに来たと思ってもらいたい。一緒になってこれから復活劇を演奏しよう」と独特の表現をした。

という、山之内理事長に関するエピソード。宇宙業界からWeb業界に自分が鞍替えした年の2000年にNASDA理事長に就任されたのだけど、自分は2001年のH-IIAロケット試験機1号機の打上げを種子島まで見に行って、成功後の記者会見に参加したときお見かけした記憶がうっすらあって。お亡くなりになって久しいけど、氏には好印象しかないです。

国民周知に力を入れろと叱られ、そんなものに金をかけるなと叱られる、公的機関の広報とは不思議な世界である。

上記は、JAXAiが事業仕分けで廃止させられた件に関するエピソードの中で出てくるくだり。JAXAiやその前身のNASADiには個人的に思い入れがあって、無くなってしまったのは本当に残念でした。ただまぁ事業仕分けを巡る不条理(と自分は思っているのだけど)は、お上のさじ加減ひとつで右往左往させられる悲しき現実のごく一部でしか無かったよなあとも。

統合事務局を設置して、担当者が頻繁に会えるように、3機関から通うのに便利な西新宿に会議室2室分の部屋を借りた。連日、課題を設けて着地案(解決案)を模索した。

上記は、NASDA・ISAS・NALの3機関統合に向けた動きに関するくだりで、非常に懐かしい。いったん宇宙業界から抜けた後、再び出向という形で(今度はNASDAの職員として)一年間舞い戻った時期に、まさにその西新宿の会議室での会議に参加したことが確かにあって。どのビルの会議室かは既に覚えてないけれど......ドメインをどうするかとか、話してたっけ。

最後に......p.106に「カスタマライズ」なる言葉が出てくるのだけど、それが「カスタマイズ」の誤記なのか、そうでないのか、よくわかりませんでした。多分誤記だと思うのですが。p.114にある「臨海状況」は、間違いなく「臨界状況」の誤記。p.119末尾の「NTS」は「NST」の誤記。

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