小さな地球の大きな世界
著
大学院での調査研究の一環で、『小さな地球の大きな世界 プラネタリー・バウンダリーと持続可能な開発』を読了、副ゼミの皆さんに紹介をしました。タイトルにある「小さな地球の大きな世界」というのは、かつては自然界に対する影響力が小さく人間にとって「大きな地球の小さな世界」だったのが、逆転した現状を言い表したもの......と理解しています。
地球の一角で私たちが何かを行うと,即座に地球のほかの地域の人々の生活環境に影響する
上記の具体例として、地球の一角で私たちが何かを行うと,即座に地球のほかの地域の人々の生活環境に影響する
とかタイの漁民のマングローブ林の管理方法が,英国の気象パターンに影響
とあって、非常に興味深かったです。どういうメカニズムで影響が発生しているのかまでは、残念ながら触れられていないのが残念。まぁ遠く離れた相互作用が人新世における新しい現象
というのは確かなのかな。
プラネタリー・バウンダリーの安全な範囲内にとどまるなら,私たち人類は,何十年も何世紀にもわたって発展し,繁栄することができる
......と言いつつ、いっぽうで永久に固定された目標ではなく,絶えず動くダイナミックな目標であり,一度に一つずつ管理することはできない
とあるのは、若干の矛盾とまでは言わないけれど、おそろしいなと感じます。だって気付かないうちにプラネタリー・バウンダリーという名のゴールポストが動いている可能性があるわけですから。
多くの研究で,経済活動のコストとして社会資本や自然資本の劣化を考慮すると,GDPベースの成長率は完全に相殺はされないにしろ,大幅に低くなるだろうと分析されている
第8章には人間の総合的な厚生を測るGDPより優れた指標が必要
ともあって、つまるところ人間活動を評価するのにGDPは役に立たない、どころかこれからのステークホルダー資本主義の世界ではおそらく頼らないほうが賢明ということかな。新たな指標というのが現状どこまでどう研究されているのかは調べてませんが。
この有限な世界で永遠に加速度的に成長ができると信じている者は,狂人か経済学者しかいないだろう
ケネス・ホールディング氏の言葉として引用されていたのですが、めちゃくちゃ面白い。