なぜ、人は宇宙をめざすのか
著
宇宙開発広報についての研究の一環で、『なぜ、人は宇宙をめざすのか:「宇宙の人間学」から考える宇宙進出の意味と価値』を読みました。宇宙業界にいた頃に密かにファンだった?樋口清司氏が「おわりに」を書いてらっしゃって胸熱。というのはさておき、Kindle版が無いので仕方なく紙で読んだけど辛い......。
今や宇宙は地球と連続的につながった空間であり、人間にとって「通常状態」となったと考えてみたらどうでしょうか。
SDGsなんかで宇宙との相関が薄く感じられるのは、結局のところ地球(地上)と宇宙とを別個のものとして切り離して二項対立的に捉えがちな傾向が根強いから、と自分は感じます。SDGsが合意された2015年と同い年に本書が出版されていた、というのはなんとも惜しい気が。
人間が生きていくためには物を食べるだけではなく、光や音や匂いと言った外界刺激を「食べる」ことが必須であることが分かります。
人間の持つ本質的な知的好奇心を拠り所として宇宙開発、宇宙進出を目指すことに一定の必然が感じられるくだり。どこまで先を「外界」として捉えるかや、そこからの「刺激」として必要十分な質と量をどう定義可能かというところは気になりますが。
「一つの目標に向かって皆が一緒に協働して取り組む」ということが、共通の価値意識を醸成
上記は宇宙開発の副産物のように自分は捉えていたけれど、主従を逆転させて考えると面白い。つまり、人類全体で共通の価値意識を醸成することを動機なり目的に、その手段として宇宙開発を捉えてみる、と。もちろんSF映画のように外敵としての地球外生命が現れれば、必然的に「共通の価値意識」が生まれそうですがw
人類が宇宙に進出する中で得られる精神的なインパクトはたくさんありますが、その中で一番大きいのは地球の「相対化」という点にあると思います。
的川先生が担当された章からの引用。いや全くその通りだわ......ていうか的川先生の言葉に一番たくさん赤線引いたわ......。