@kazuhito
Kazuhito Kidachi's Personal Web Site Since 2000

逆・タイムマシン経営論

大学院の広報・PR概論という授業で紹介されたのがきっかけで読了したのが、『逆・タイムマシン経営論』。タイトルが目新しくて惹かれたものの、書かれている主張は割とシンプルというか、要は何事も鵜呑みにしてはいけないというのを丁寧に解説している印象。個々の事例についてかなり深掘りしているけれど、メッセージとしては単純なだけに、もっとあっさりまとめても良かったような。

本質を見極める。一言で言えば、ここに逆・タイムマシン経営論の効用があります。

なんてあると、大層な論理のように身構えてしまうけれど、結局のところ鵜呑みにしてしまうのは個々の事象の裏にある文脈に考えが至らないからだ、というのを繰り返し述べているに過ぎないような。それを「飛び道具トラップ」「激動期トラップ」「遠近歪曲トラップ」などと分類していますが、すべてに共通しているのは著者が主張するところの文脈剥離、ではないかと。それにしても

人々がいつの時代も「今こそ激動期!」と言っている

というのは笑いました(し、ちょっとだけ反省もしました)。特にIT業界、Web業界に身を置いていると、口癖を通り越して何だろう、もはや完全に身体に染み付いてしまって以下略。しかしミクロ視点で眺めれば、どんな時代・業界にも多かれ少なかれ変化はあるし、すべては常に進化の只中にあるとも思えるわけで。

技術は非連続でも、それを使う人間と人間の需要は常に連続している。このことを考えると、インターネットの登場による人間と社会の変化は、「革命」(revolution)というよりも、一定の時間幅をもって徐々に進行する「進化」(evolution)といった方が正確

何かの事象を「革命」と呼ぶのは、よほどそれに耳目を集めたくて誇大に表現しているか、さもなくばかなりスコープを狭く切り取ったところで敢えてそう評しているか、どちらかの場合が多い気がしてきます。自然現象においては不連続かつ大規模な変化も確かにあるけど、人間の所作の結果については概ね漸進的なのかな、とも。その意味では

世の中の変化のほとんどは、徐々に進む「静かな変化」

というのに同意。そして

即効性を競うファストメディアとは一線を画し、読み手に完全な集中を求める「スローメディア」と向き合う必要があります。

というのは、マスメディア論の授業を終えた今となっては、何とも味わい深い一文。食べ物だって、ファストフードばかり食べてたら栄養が偏るだの何だのと言われて久しいけれど......一部の事例を個別の事情を抜きに、さも一般則として成立するかのように文脈から切り離したり、その結果としてデカめの主語に置き換えて語るようなメディアとは、一定の距離を保つようにしないとね。

現在地:ホーム > 覚え書き > 月別アーカイブ > 2021年8月 > 逆・タイムマシン経営論
Google カスタム検索を利用しています