電子書籍2020 本の在り方は変化する
著
株式会社ボイジャー取締役の萩野正昭氏がお書きになった、『電子書籍2020 本の在り方は変化する』を読了。第5章「情報のリンクこそ本の役割」に含まれていた情報へのアクセスは基本的人権である
というフレーズに惹かれて買ったのだけど......残念ながら期待外れというか、自分の読解力が低いせいか、著者の主張は終始消化不良のままでした。
著者の、従来の紙媒体をベースとした電子書籍に対する一種の諦観だったり、これからのWebベースの出版に対する熱い想いというか情熱は、すごくよく伝わってくるのです。しかししかし、結局のところ著者にとって出版とは何なのか? HTMLではなくEPUBにこだわる理由は? 読み手にどのような態度変容を求めているのか? さっぱりわからずじまいでした。
本はパッケージから離れて、WWWの情報と融合していくことができるのです。
ならば、EPUBというフォーマットにこだわる必要もなく、それを電子書籍とか出版などと呼称できるかどうかはさておき、ハナからHTMLでコンテンツを制作し公開すれば良い。そう思ってしまうのですよね。Webの素晴らしさ、アクセシビリティの重要性を著者はよくご存知のようだけれど、それらと出版の2文字を繋ぐ文脈が、どうしても本書からは読み取れません。そして
見栄えはどうでもいいのです。形も、厚みも、重みも、手触りも......そんなものは全て捨てるからこそ、Webに本を作ろうとしたのです。
というくだりは、多方面で不用意に敵を作ってそうな気がします。物理媒体そのものに情緒的、そして機能的価値を見出している人は少なくないでしょうし、紙の本を好む人なり紙の本の必要性というのは、短期的には無くならないでしょうから。紙が提供してきた特性を将来、デジタルで再現するようなテクノロジーが登場すれば、いよいよ紙の危機が訪れると言えそうですが。
すべてはWWWにのって、相互リンクし合う時代。これにのっていく「あたらしい本」の形を目指して。愛される「新生・電子書籍」になるときです。「出版」も、生き残るのではなくて、新たなものをつくり出していくときです。
上記は担当編集の深谷その子氏の言葉ですが、やはり抽象的で「新生・電子書籍」なる存在が具体的に何なのか、不明確です。それはもはや書籍などではなく、ただのWebコンテンツではないのか? と思ってしまいます。もう少し詳しい解説が欲しい、です......。