世界線
著
月曜の朝に突然、それまでとは別の世界線に切り替わってしまって。
その世界線は、自分が1ミリも想像していなかった世界線。
切り替わった衝撃は、それはもう、言葉で表現できないくらいの衝撃で。
理解しようとしても理解できない、受け入れようにも到底受け入れられない。
なぜ。どうして。決して得られぬと分かっていながら答えを求めて、反芻する問い。
葬儀場で名前を見てもまだ信じられず、顔を見てようやく認めざるを得なかった。
なぜ。どうして。自分のせいなのか。自分に防ぐことはできなかったのか。
純粋無垢な優しさや誠実さ、悪気の無い悪戯心に、うまく応えられなかったからなのか。
そう思ってしまうのは、自惚れの一種なのか、何なのか。
もう、ラムネガチャのラムネが補充されることは無く。
もう、ぬいぐるみとか意味のわからないおもちゃが居ない間に置かれていることも無く。
もう、グルテンをネタにTwitterでいじってくれることも無い。
寂しい。本当に寂しいよ。そして繰り返されるなぜ、どうして。
こんな世界線、望んでなんか無い。
僕に限らずきっと周りの誰もがこういう状況に陥るだなんて、知ってのことかい。
随分じゃないか。おかげで今週、めちゃくちゃだよ。どうしてくれる。
......なんてな。嘘だよ。恨み言なんかより、感謝の気持ちが遥かに強いよ。
本当はもっとちゃんと声に出して色々御礼を言いたかった。台詞だって事前に考えてた。
でも「ありがとう」しか言えなかった、そもそも嗚咽混じりだったからちゃんと言えてない。
たぶんだけど、変な声でしゃべってたと思う。それは認めるし仕方ない、普段からだ。
でも言い訳させて欲しい、あの場で冷静にお別れできた人なんてきっと居ない。
こんな世界線に慣れる日が来るか来ないかで言えば、きっと来てしまう。
そして悲しいけれど、その日が来るのは、そう遠くない将来のはずだとも思う。
この世界線に残された一人としては、そうやって生きながらえていくしかないんだよね。
今まで本当にありがとう。