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続々・浅川賞について思うこと

浅川賞、という賞については過去に2回、この覚え書きで言及してきました:

その続きなわけですけど、今年のWebグランプリの開催概要が昨日発表されたようです。その中で、浅川賞応募にあたってというページに以下のくだりがありました:

企業サイトのアクセシビリティ対応が進みつつあること、およびスマートフォンの普及などに伴い、音声でのWebアクセスが広まりつつあることを踏まえ、2017年度からは「音声出力だけで情報の取得が楽しめるかどうか、わくわくできるかどうか」という音声ユーザビリティに着目した審査に重点をおきます。

応募登録時にアクセシビリティの準拠度を自己申告して頂き、審査の参考とします。また、サイトのアピール記入欄には、そのサイトで利用者に伝えたい内容やアピールしたい点を記述してください。スマートフォンでの審査を希望する場合には、その旨も記載ください。

審査は、音声アクセスのプロフェッショナルである視覚障害者と、Webアクセシビリティの専門家による合議で行う予定です。

音声ユーザビリティに着目した審査、とあります。すごく穿った見方をすれば、評価する側の体制や仕組みは従来と大きく変えることなく、実態と齟齬のないよう定義を見直した(「アクセシビリティ」という言葉を全面に打ち出すのをやめた)、と受け取れなくもないです。アクセシビリティを謳いながら、視覚障害当事者による評価に偏りすぎてはいないか?というのが、自分がこれまで浅川賞を批判してきた一番のポイントだったわけですから。まぁ、僕のものの見方がひねくれているだけ、なのでしょうけど。

一方で、定義云々はさておき、浅川賞が存続したこと自体には安堵したのも事実。自分はあくまでWCAG 2.0 / JIS X 8341-3:2016 を基準に用いた、客観的かつ透明性のある評価によってアクセシビリティ品質の表彰を行なうべきと考えていますが、それにかかるであろうコストを考えれば、今回発表された定義のようにスコープを狭めた形で評価するのも致し方ないと思っていて。Webは目で見て使うもの、というステレオタイプに対する一種のアンチテーゼとしての意義はあるかなと。

[ 2017-09-13 追記 ] 注釈が2点、いつの間にか新たに加えられていました:

(※1)Webアクセシビリティへの対応は、スクリーンリーダー等を用いた音声でのWeb利用への対応にとどまらず、様々な利用者への対応・配慮が必要となります。浅川賞では、浅川氏にちなみ、音声でのWeb利用に重点をおいた審査を行います。
(※2)ウェブアクセシビリティ基盤委員会による「ウェブコンテンツの JIS X 8341-3:2016 対応度表記ガイドライン 2016年3月版」(http://waic.jp/docs/jis2016/compliance-guidelines/201603/)を参照のこと

1つ目の注釈については、音声による利用環境にやや偏った審査を行うことの理由として、浅川氏にちなんだことが明確化されており、筋が通った感があります。2つ目の注釈については、以前「準拠度」とあった記載が「対応度」に書き換えられた上での追加と理解しています。JIS X 8341-3の普及活動に参加している立場からすると、これはこれで喜ばしい追加なのかなと。

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