UX界隈(何処)におけるアクセシビリティの耐えられない軽さ
著
タイトルは適当に某小説のそれをもじっただけで、深い意味はないです。先日、神戸で催されたアクセシビリティの祭典に参加、対談「アクセシビリティとUX」に登壇したのですけど、その中で挙げられたトピックスの一つに「アクセシビリティを考えている人はUXも考えているけど、UXを考えている人はアクセシビリティを考えていない説」というのがありました。
さすがに考えていない人はいないと思うものの(煽り過ぎ?)、UXデザイン絡みの書籍や記事でアクセシビリティに言及しているものは、全体からするとやや少ないように感じます(あくまで自分の狭い観測範囲で、という予防線は張っておきます)。統計的な調査結果なんて無いと思いますけど、仮に実態がそうであったとして、考えられる理由を想像するに
- アクセシビリティの重要性は認識しているが、UXは主語として大きい部類であり、スコープないし粒度的に取り上げにくいので、話に出せない
- 優れたUXにとって、UIのアクセシビリティが重要であることは、自明すぎて語るまでも無い
- アクセシビリティはUXと関連しないと考えているので、話に出さない
といった辺りでしょうか? 本当は神戸で、その辺りを村岡さんやミキさんと一緒に掘り下げたかったです。アクセシビリティはUXと関連しないと考えている
専門家は存在しない、いや存在して欲しくないと個人的には思いますが、どうなんでしょうね。UIがアクセシブルであるということは、優れたUXの必須要件、言わば大前提であると思うのですけど。
UXを語る文脈において割とよく目にするのは、ペルソナを作りカスタマージャーニーマップを書いて......といった風に、ターゲットとするユーザーなりコンテキストを明確にし(つまり「絞り込んで」)コンテンツやUIを最適化しましょう、といったお話。そのプロセスが、ひょっとすると誰でも・どんなコンテキストでも使用しやすくするというアクセシビリティの概念と、やや対立して(両立させ難く)映っている可能性はある、と思います。
しかしWebに関して言えば、デジタルメディアであるがゆえに物理的制約を受けにくいというのもさることながら、アーキテクチャ自体がアクセシビリティを確保しやすい特性を備えているわけで、UIの最適化とアクセシビリティの確保は両立可能と考えます。Webにアクセスするユーザーもデバイスも多様化し続けている昨今、むしろ積極的にアクセシビリティを高め、アクセス可能なコンテキストをより幅広くカバーしておくことが、最終的により優れたUXの実現に結びつくはず。
何か結論めいたことを書けるほど頭の中が整理できている状況ではないですが、UXという一種のバズワードに乗っかり、UXを語る文脈でアクセシビリティを訴求していくことを想定すると、上記のようなストーリーなりアプローチが良いのではないか、と考えている今日この頃です。先だって角田さんが公開されたスライド「アクセシビリティ/ユニバーサルデザインとUXの関係」に表現されているような、コンバージョンの取りこぼしを減らすイメージも、機会損失の最小化というアクセシビリティのメリットをうまく捉えていて、良いなぁと思います。