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目の見えない人は世界をどう見ているのか

伊藤亜紗著『目の見えない人は世界をどう見ているのか』は、Webのアクセシビリティに携わる立場として、また全盲の同僚と日常的に接する機会のある立場として、大変面白く読ませていただきました。本書は、広い意味での身体論を構想しているそうで、障害に関しては

助けるのではなく違いを面白がることから、障害に対して新しい社会的価値を生み出すことを目指しています。

と述べています。Webコンテンツのアクセシビリティを確保するという行為を、自分は障害者に対する福祉という側面でしか語らないのは誤っている、少なくとも勿体無いというふうに捉えているのだけど(アクセシビリティがGoogleのランキングシグナルになる日参照)、なんとなく本書にもそれに似たスタンスを上記のくだりから感じました。

いろいろな気づきを得たのですけど、「意味」とは「情報」が具体的な文脈に置かれたときに生まれるものという前提のもと、「情報」ベースの関わりとは何か。乱暴に図式化してしまえば、それは福祉的な関係と論じ、意味に関して、見える人と見えない人とのあいだに差異はあっても優劣はありませんとされていたのが、最大の収穫。視点を持たないがゆえに、モノに対して表や裏といったヒエラルキーをつけることが無い(不可能)というのも新鮮で面白かったし、ある意味においてはちょっと羨ましかったり。

そしてまた、何かをするのにどの器官を使ったっていいじゃないかという提案も面白い。これはそもそも人間の感覚を五つに分けたり、見る働きを目の専売特許とみなしたりすること、それ自体が間違っているのではないかという疑念を受けての発想なのですが、Webアクセシビリティの目指すところと通じる部分があるなぁと。つまりコンテンツにある情報を目で読んでもいいし、耳で(スクリーン・リーダーの発する音声で)読んでもいいし、あるいは点字ディスプレイのような装置を使い触覚で読んでも、同じ意味を獲得できるようにするっていうか。

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