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なぜ今、私たちは未来をこれほど不安に感じるのか?

松村嘉浩氏の著作、『なぜ今、私たちは未来をこれほど不安に感じるのか?—数千年に一度の経済と歴史の話』を読了。数千年に一度の、というタイトルからはだいぶ大げさな印象も受けますけど、今を生きる私たちの直面している不安が、過去に例のない極めて大きな社会的・経済的変化に起因している......という主張を、分かりやすく解説されています。

読みやすさのためか、架空の大学教授・内村氏と、その研究室に所属することになった女子学生・絵玲奈の対話形式で話が進むのですが、途中で話題にのぼるのがことごとくイマドキの文芸作品なので、余計にとっつき易さを感じさせられます。ざっと挙げると『進撃の巨人』『ALWAYS 三丁目の夕日』『ターミネーター』『セックス・アンド・ザ・シティ』『氷菓』『鋼の錬金術師』など......無論、それら全部を読んだり見たりして知っていたわけではないけれど、概要はちゃんと注釈で紹介されているので、全然知らなくても無問題。

本書を僕なりの解釈で要約するなら、人類にはこの先もう右肩上がりなんてあり得ないのだからそれを前提とした社会や経済、文化を構築し始めなければならない、という一種の注意喚起。読み進めながら、かつて『アインシュタイン・ロマン』を通じてミヒャエル・エンデ氏の鳴らした警鐘が、懐かしく思い出されました。私たちは、社会的災難と環境問題的災難、この二つから一つを選ばなければならないという、高校生の頃から僕の心を捉えて離さない警句です。

もし仮に将来、成長を前提としない定常型社会 — それが鎖国状態にあった江戸時代の日本とどこがどれだけ似通ったものになろうとも — をうまく構築できるとすれば、それによってエンデ氏の語ったところの環境問題的災難は回避できるのかもしれない。そう考えればこそ、今現在享受している数々の利便を少なからず手放すことを強制されても僕個人は甘受できるだろうけど、社会全体としてはどうだろう。うまい落とし所なんてそう簡単に見つかりそうに無いけれど、それはそれで本書が明らかにしたかった「不安」の一部なんでしょう、きっと。

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