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Re: 早稲田大学のサイトリニューアルがなぜこんなにひどいのか。

hokorinさんのお書きになった早稲田大学のサイトリニューアルがなぜこんなにひどいのか。という記事が炎上してしまっているようです。何となく言わんとしていることが分かる部分はあれど、しかし全体的に言葉足らずな印象はあって、残念な感じがします。本件については当初、触れるつもりはなかったのですけど(論点が複数絡み合っている印象があり触れにくく感じました)、とはいえWebアクセシビリティについて書かれた記事でもありますので、その領域についてのみ、自分の考えを整理する目的で書いてみようと思いました。

今回のリニューアルではIE10以降を対象外としていて、普通に使っているIE7や8では見ることができません、

これはアクセシビリティ上かなり問題だと思います、多くの人が目にする大学というサイトでノンアクセシビリティを貫くというのは、いまの時代にそぐわないのではないでしょうか。

まず上記のくだりについて。はてブでかなり言及された普通に使っているという言い回しは置いておいて、IE7やIE8でまったくコンテンツを利用することができないかというと、そんなことはありません。確かにIE7やIE8では表示上レイアウトが崩れ、可読性が損なわれはしますが(「事実上」見ることができない状態に近かったりしますが)、それをもってノンアクセシビリティと断定するのは早計と考えます。

すべての情報や機能がIE7やIE8から利用できないというわけではないですし、そもそもIE7やIE8での表示結果だけをもってアクセシブルか否かを論ずることなどできないはず。適正に論ずるならば、コンテンツの実装に使われた手法が「アクセシビリティ・サポーテッド」か否かを詳細に検討する必要があると思います。アクセシビリティ・サポーテッドの詳細はここでは割愛しますが、WCAG 2.0解説書アクセシビリティ・サポートを理解するを参照していただければと思います。

なお、自分は早稲田大学が閲覧環境としてIEのバージョン10.0以降を推奨している点の是非は論じません。それでたとえ不利益を被ろうとも、あくまでWebサイトの運営側、大学側の自由と思うからです。ただし、より新しい表現なり技術を採用する必然があり、それゆえに比較的新しい閲覧環境を前提とした設計・実装を行う場合であっても、Graceful Degradationの発想をもって、重要なコンテンツや機能だけでも可能な限りアクセシブルにしていただきたいとは思います。

スマートフォン、タブレットに対応したサイトになったみたいですが、そもそものところで、アクセシビリティを無視しているということは、どうなんでしょうか、レスポンシブ=アクセシビリティだと思っているのですが・・・

殊更に母校の肩をもつつもりもないのですが、自身でそう結論づけるのに十分な調査を行ったわけではない以上、自分は早稲田大学がアクセシビリティを無視しているとの考えには賛成できません。また、レスポンシブ=アクセシビリティとの見方は明確に否定しておかなければなりません。レスポンシブWebデザインでスクリーンサイズに柔軟な表示を実現することと、コンテンツのアクセシビリティを確保することは、基本的に次元の異なるお話です。前者はあくまで、さまざまなサイズのスクリーン向けに視覚表現上の辻褄を合わせるテクニックになりますが、後者はより広範なデバイス上のユーザーエージェントや支援技術を介して、いかに中身の部分を利用可能にするかという命題を扱います。

じゃあ、お前ならどうするってとこですが、アクセシビリティは必須です、IE6も対象範囲(くずれてても内容は読み取れる)にします。

アクセシビリティを必須とすべき点は同意しますが、しかしどの程度のアクセシビリティを早稲田大学のサイトが備えるべきかについては、おそらく意見が分かれるところでしょう。また、IE6も対象範囲と述べている点についても、異論があります。まず、どのブラウザで意図した通りの表示を担保すべきかと、アクセシビリティをどの程度確保するかは、明確に分けて論ずるべきだと考えます。そのうえで、IE6はIE7以降と異なり既に完全にサポートが終了しているブラウザでありますから、設計・実装上の考慮に含める必要はありませんし、むしろ対応コストの面からすれば含めるべきではない、と思います。たとえその対応が、くずれてても内容は読み取れるレベルを実現する程度であったとしても、です。その点、早稲田大学サイトのリニューアルにモヤっとした話 - Liner Noteで引き合いにだされているキヤノンのサイトは、非常に丁寧な対応を行っていると思います。

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