ウェブとはすなわち現実世界の未来図である
著
『ウェブとはすなわち現実世界の未来図である』の覚え書き。はじめに、のなかで登場する現実世界はウェブのなかで起きている「潮流」をつねに後追いしている。
とか、「社会はウェブをコピーする」。これが本書の重要なキーワードだ。
といったくだりが当初ピンと来なくて、これは買って失敗しちゃったかもなぁと思ったのですけど、読み進めるほどに俄然面白くなって、最終的には読んで良かったと思えた一冊。
現在の座標軸と未来への羅針盤
が本書の提示したかったものらしいけど、いずれも見事に描かれていたのではないかと思います。自分が日頃漠然と感じていたところとの一致を少なからず確認できたという意味では、妙に自信を持たせていただいたような面があるかな。と同時に、モヤモヤしていた部分を鮮やかに文章化されてしまったことへの微妙な悔しさみたいなのも多少、あったりして。いずれにしても、うんうんそうだよね、と賛同できるところが多かったです。以下、特に印象的だったくだり7選:
ネットとそれにつながるテクノロジーは、次第に文脈理解の方向へ向かわざるをえない。それは情報をエンティティ(実体化)させようという動きともいえる。
モノを所有するのではなく、そのモノがもつ価値にアクセスする時代へと変化が起こりつつある。
人材を集めるという点で効率的だと思われていた「会社」がいつの間にか足枷にならないよう、いまではその枠組みと考え方を柔軟にする必要が生まれている。
個人や部門に従属していた情報をパブリックにし、シェアする。そこから次の波が起きていく。
高性能なスマートフォンをもって歩くということは、ほとんど脳にチップを埋め込むのと同じなのだ。SFで描かれた未来はすでにやってきている。
ウェブには「スキゾ(分裂症)」と「パラノ(偏執狂)」の両方を併せ持ったような面がある。おそらくこれから起こりうるのは、その揺り戻しだ。
よいアイデアを数多く出すことも大切だが、一つのアイデアをものにするまでコミットしつづけることはもっと大切である。
3Dプリンターのような代物が国際宇宙ステーションにまで持ち込まれる昨今、いよいよ人やお金、情報に加えてモノの流通も、インターネットを介し一層ダイナミックに変化して行く......その行き着く先は、果たして明るい未来か、暗い未来か。自分は割と楽観的な見方をしていますが、程よいさじ加減のオープンさだとか「シェア」の力をうまく活用していけさえすれば、きっと未来は暗くないハズ。長所と短所、期待と不安は常に拮抗しながら増大して映るけれど、そのバランスとて最終的には本書にたびたび登場する「ヒューマン・ファースト(人間中心主義)」の概念がいい感じに取ってくれるものと信じたい。