フロントエンドエンジニア養成読本
著
サイバーエージェントの豪華執筆陣な皆さんが共著された『フロントエンドエンジニア養成読本』を、さらっとですが読了。印象としては、少し前に出ていた『現場のプロが教えるWeb制作の最新常識 知らないと困るWebデザインの新ルール』のカバーする範囲を少し狭めて、うんとマニアックにした感じでしょうか。あえて苦言を申せば、アクセシビリティに特化した章が無いというのは致命的だなぁと思ったくらいで、全体的にとても読み応えのある構成・内容です。実際、自分が不得手とするJavaScriptとかセキュリティ周りは全く咀嚼しきれていません。はー、勉強しなければ。
とはいえ、咀嚼した範囲内で気になるところが無かったわけでもない。p.72のリスト32とかリスト34にはfont-weightプロパティの値に18pxという明らかな誤記があるし(誤記といえばp.3で「世界初」が「世界発」となっていたのには読み始めて早々に「えー」ってなった)、p.90では「文字サイズを変わらないようにする設定」としてminimum-scale=1.0,maximum-scale=1.0,user-scalable=no
なんてソースを紹介しています。まぁ誤記の類は些細なことだしどうでも良いとして、後者についてはいかがなものかと。決して小さくはないであろう影響力を有する本書で、このように非アクセシブルな実装を推奨するかの書きっぷりをされてしまうと、何も考えず脊髄反射でコピペする層(誰)に悪影響を及ぼさないか心配。そういう手法を紹介すること自体は構わないのですけど、その使用については、いくら慎重さを求めても求め過ぎることはないと思うのですね......残念。それはそうと、ちょっと感動してしまったのは、第1章のなかで敬愛するMollyの言葉が紹介されていたこと。
Webの母として知られるMolly Holzschlag氏は次のように述べています。
「次の10年間、同じことをしていたいと思うなら、この業界は向いていない。」。
残念ながら、日本で彼女の名前を知っている人はそれほど多くないと思います(知っているとすれば僕と同じかそれ以上の古株、もしくは英語圏のWeb業界に余程精通した人か?)。けれど、Web標準やアクセシビリティに対する彼女の情熱の一端に触れたおかげで、なんとか僕はこの業界で生き残って来れたと思っているし、彼女の数多くの著作のうち『The Zen of CSS Design: Visual Enlightenment for the Web』の日本語版刊行に携われたのは、今でもすごく誇りに思っていて......だからこそ、第1章を書かれた斉藤氏には、Mollyの言葉を本書で取り上げてくださった、その事実に対して個人的に感謝したい。
既に『フロントエンドエンジニア養成読本』の感想でも何でもなくなっているけれど(苦笑)、実は彼女は昨年から闘病生活を送っています。FacebookやTwitter越しにかけられる言葉を僕は持っていないのですが、少しでも助けになればと、つい先ほどHelp Us Help Molly Holzschlag by Brian Keith Sullivan - GoFundMeから寄付をしました。もし、これを読まれた方で、Mollyをサポートしようという方がいらっしゃれば、是非(それが寄付であれ何であれ)自分からもお願いをしたいと思います。よろしくお願いいたします。