Web Standards Never Kill the HTML Star
著
タイトルは適当。だいぶ遅レスではあるけれど、Web Standards Killed the HTML Star - JeffCroft.com(手っ取り早く日本語で内容を把握したいならJeff Croft「web標準が成功しhtml名人は用済みになった」 - 以下斜め読んだ内容が参考になります)を読んでの個人的感想。僭越ながら、かつては自分も元記事でHTML and CSS "guru"
と表現されるところの一人だった自覚があるから。もっとも、そういうグルっぽい役回りで少しばかり有名だった「かもしれない」のは過去のごく短いあいだのことで(2006〜2007年頃)、また当時から自分より何倍もWeb標準に詳しい人なんて大勢いらっしゃったわけで、本当におこがましいにも程があるけど。
元記事が指摘しているところの傾向、つまりWeb標準の普及がHTMLやCSSの専門家としての仕事を(逆説的に)奪った、みたいな流れというのは確かにあるでしょう。けれど、それで完全に職を失ったとか食っていけなくなった人がいるって話は聞いたことがなく、微妙に実態との乖離を感じます。HTML/CSSにだけ特化した人材、の市場価値が目減りしてきたのは間違いないにせよ、ちょっと見出しが釣りっぽ過ぎる。少なくとも、Web標準の「旗ふり役」を担った人々の多くは、自らの活動の行き着く先がどういった状況かぐらい見据えて旗をふっていたと思うし、将来どういう仕事で食っていくかにしたって、ちゃんと考えて行動していた(がゆえに、専門分野が多少スライドはしても業界内でしっかり生き残っている)と思われ。特に、僕がWeb Standards Project(以下「WaSP」)でご一緒した皆さんは全員そうだと思いたい。
もっとも、それってWeb標準(文脈的にはHTML/CSSと書くべきか?)に限った話でもないのですよね。あらゆる物事には賞味期限が付いて回るものだし、動きの速いWeb業界では尚のこと、賞味期限を迎えるのが早くなりがち。たとえ自分の得意とする何か、が一時的に注目を浴び市場価値が高騰しようとも、早晩コモディティとなり陳腐化するのが世の理。そうなったときに(というかそうなる前に)どう行動すべきか......なんてことは、変化著しい今世紀を生きる誰もが常に考え続けなければいけないこと。冷静に自分のスキルセットなり興味・関心の対象を客観視しながら、10年先は無理でも5年とか3年先を見据えて生き抜く必要があるでしょう。まぁ、どれだけ陳腐化した分野であっても、突き抜けた(余人をもって代えがたい程に専門性を極めた)人へのニーズというのは、あると思いますけどね僕は。いや、そう信じたいだけかな。
また、WaSPを立ち上げたZeldman御大が、当該記事に言及したIt's 2014. Is Web Design Dead? - Jeffrey Zeldman Presents The Daily Reportの内容はすごく賛同できます。一言でWeb標準のムーブメントといっても実際にはいくつかのベクトルがあって、Croft氏が言及しているのはブラウザーベンダー向けの活動(=ブラウザーにWeb標準を実装させ、異なるブラウザー間でコンテンツの表示/動作上の差異を最小化させる)に特化したもの。そちらは概ね成功を収めたように思うし、だからこそWaSPは終了したけれど(終了の理由は他にもありますが......)広く業界向け、Webデザイナー/開発者向けの啓蒙というのは今なお必要だし、しばらくは継続の必要があるでしょう。アクセシビリティ然り、プログレッシブ・エンハンスメント然り。