HTML5マークアップ 現場で使える最短攻略ガイド
著
ひょんなことから、懇意にしていただいていた編集者の方よりご連絡をいただき、浜俊太朗さんの最新著作『HTML5マークアップ 現場で使える最短攻略ガイド』をいただきました。HTML5カルタが付いてくる(ただし「お試し版」であって、完全版は100枚超のところ36枚分のみが付属)、ということで勤務先でも話題になっていた(というか僕が話題にしていた)ものです。
早速読ませていただきましたが、とてもコンパクトにうまくまとめられているなぁという感想。ちゃんと調べてはいませんけど、おそらくは以前から「HTML5本バブル」とでも呼べる状況が続くなか、ターゲットをHTML 4.01やXHTML 1.0を普段書いているコーダーやデザイナー
に絞り込んで、その想定読者に必要な情報に特化/差別化できている。オールカラーで「柔らかく」することに気を配りました
、というのも差別化の一つとして有効だったのでは?実際、紙質と相まって親しみやすい本に仕上がっていると思います。
また、本書内ではページ脇にある「関連ページ」が充実しており、相互参照が容易なつくりになっています。ある要素や属性について、他のページでの記載に(索引を介さず)ジャンプしやすいのは便利だなと思いました。読み進めていくうち「あれ?この要素はどういう要素だったっけ」なんてことは良くありますから。
そんなわけで、上述の想定読者に当てはまるなーという方には(=今から・ゼロからHTMLを学び始めるというのでなければ)オススメの良書かと(カルタで遊べるし!)。以下は、いずれも重箱の隅つつきですが、自分が気になったところです:
- p.25〜p.26にかけて掲載されているソースコードで、createElement()による要素生成とhtml5shivの読み込みの両方を載せている意図が、わかりませんでした。後者はある意味、前者の目的を兼ねているのだし、条件分岐コメントの使用例を示すだけなら、後者のみでも良かったのではないかなと。
- p.29で紹介されているFirefoxのアドオン、Html Validatorについてですが、残念ながらオンラインでないとHTML5を使ったマークアップは検証できないのですよね。HTML 4.01やXHTML 1.0のマークアップなら、オフラインでもTidyやSGML Parserで検証してくれるんですが。
- p.32から始まる、
実在するWebサイトをHTML5に(勝手に)リニューアル
という企画というか流れは、とても面白いなと思いました。ちなみにこれ、スターバックス コーヒー ジャパンさんには当然許可を得ているのですよね?バーターでしょうか(謎 - 文書型宣言に関し、p.33で
XHTML5の場合は大文字でなければならないため、現状では大文字を使っているサイトが多いようです
とあって、おおそんな理由だったのかと感心したのですけど、そもそも大文字のほうが多数派だとか、その理由が上記のようなものだという統計ってありましたっけ。 - p.63のワンポイントについて。確かに、
セクションを明示する場合は、すべての見出しをh1要素でマークアップしても間違いではありません
が、それをどこまで推奨できるかは微妙かなと思っています。古い記事ですけど、Make sure your HTML5 document outline is backwards compatibleで記されているように、アウトラインアルゴリズムに対応していないUAや支援技術でアクセスした際の懸念から、まだ時期尚早感が。 - p.86の
nav要素内にリストが必須というわけではありません
というくだりを読んで、Navigation in Lists: To Be or Not To Beを懐かしく思い出しました。コメント全部に目を通したわけではありませんが、やたら盛り上がったなぁというか、こういう話題が好きなひとって多いのねというか。 - p.101のdatetime属性の紹介あたりで、ISO 8601に言及しても良かったのでは、と思いました。
- p.106のfigcaption要素のマークアップ例に顕著ですが(他にp.116のrp要素のところなどでも見られましたが)、正しいソースコードと誤ったソースコードがぱっと見、わかりにくい印象がありました。もちろんちゃんと読めば正誤の判断はつくのですけど、全く同じ体裁で上下に並べられてますので......○×でも、OK/NG表記でも、何かもう少し視覚的に目立つ差別化ができたら尚良かったのに、と。
- p.160で会話文のマークアップ例が出てきます。そこは4.13 Common idioms without dedicated elementsの4.13.4 Conversationsにある風に人名をb要素で括って、話題をb要素に繋げても面白かったかもしれません。
- p.165で
もう関連性していない
というくだりがありますが、もう関連していない
の誤記なのかなと感じました(「性」が一文字余計?)。 - p.175で
alt属性の指定は必須ではありません
というところにマーカーが引かれています。しかし、それは次のページであくまでも特殊なケース
とされているように、許される状況はそう多くないはず。であるからして、マーカーで目立たせたことにより「あ、HTML5ではalt属性付けなくてもいいんだ」などと誤読(早とちり)されないか、ちょっとだけ不安。