Re: 首相官邸ホームページのリニューアル構築費用に対して製作者側からの考察
著
4,500万円が妥当だの妥当でないだの盛り上がっているようですね。どうしても金額「だけ」を取り出して云々したくなるのが世の常・人の常だと思っていますから、その点については意見も感想ももっていません。いやもてない、と言ったほうが正確かな。あきみちさんがGeekなぺーじ:金額の報道は効果的に怒りを煽るで書かれているように、どこまでが4500万円の範囲内なのか
を自分も知らないし。それはそれとして、首相官邸ホームページのリニューアル構築費用に対して製作者側からの考察という記事のアクセシビリティに関する考察は、多くの人にあらぬ誤解を招く可能性が高いように感じたので、反論させていただきます。
公共系の案件で用いられるアクセシビリティの基準の一つとして『Webアクセシビリティの新規格「JIS X 8341-3:2010」』というものがあります。
正確な標題は「高齢者・障害者等配慮設計指針―情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス―第3部:ウェブコンテンツ」です。JIS X 8341-3:2010は規格番号になります。
その達成基準はA~AAA位は求められると思います。
推測に基づく書き方をされていますが、達成等級にはA、AA、AAAの三種類しか定義されていないので、意味がよくわかりません。そして満たすべき達成等級については、みんなの公共サイト運用モデル改定版(2010年度)で提示されています。国及び地方公共団体等の公的機関
の既に提供しているホームページ等
に対しては、2013年度末までにJIS X 8341-3:2010の等級Aに準拠、また2014年度末までに等級AAに準拠することが、目安として提示されています。
アクセシビリティの達成基準の実現を目指す時、犠牲になるのが「デザイン性」です。
「デザイン性」の言葉の意味が不明ですが、アクセシビリティの確保においてデザインを犠牲にしなければならない、ないし優れたデザインのサイトのアクセシビリティは総じて低い、といったことを意図されているのだとしたら、それはまったくの誤りです。アクセシビリティの確保は、Webサイトをデザインする行為の一部であって、別個の事案というわけではありません。優れたデザインのサイトとは、必然的にアクセシブルであると自分は考えます。
「デザインしょぼ!」というのもごもっともだし、実際にもっと安く、良いデザインを提案出来る人もたくさんいるはずです。
文脈的に、ここで言われている「デザイン」とは主に「ビジュアルデザイン」のことと察します。そのうえで反論しますが、ビジュアルデザインを犠牲にしなければアクセシビリティが確保できないなんてことはありませんし、両立は可能です。確かに、アクセシビリティを確保しようとすればビジュアルデザイン上考慮すべき点、配慮すべき事柄は少なからずあります。しかし、対象がWebページ/Webサイトである時点で、そうした諸々を勘案したうえで機能価値、情緒価値を最大化し得るビジュアルデザインを創り出すのが、プロのWebデザイナーの勤めのはず。仮にそれが不可能と主張されるのであれば、残念ながらその人はWebデザイナーを名乗るべきではないとすら思います。