生物と無生物のあいだ
著
福岡伸一著『生物と無生物のあいだ』は、長らく書店の店頭で平積みされていただけに、タイトルだけは随分前から目にしていたように思います。しかし実際に買って読んでみようと思ったのは、『辺境生物探訪記』のなかで言及されていたのを読み知ったのがきっかけ。ともあれ、こちらも『辺境生物探訪記』に負けず劣らず、とても面白かったですね。本書の記述に対しては批判も少なからずあるようだけれど……まず第1章で、自分がそれまで何となく抱いて来た野口英世に対する印象を否定されるところからして、グイグイ引き込まれたものなぁ(関係ないけど、野口英世の生家を小学生の頃父親に連れられて見学した記憶があります)。
やがて話はDNAの二重螺旋構造をいつ、誰が、どのように発見したのかに移ります。そのあたりは若干、スキャンダラスでもあるのだけど、それでも僕は論文審査を受けた経験を持たないので、ピア・レビューという仕組みからして興味深かったです。演繹法と帰納法を対比させるかのくだりと、「Chance favors the prepared minds.(チャンスは準備された心に降り立つ)」というフレーズは印象に残りました。そうしてDNAにまつわる研究史を紹介した後、生命の定義につき本書冒頭で提示した「自己複製するシステム」ではなくそれを「動的平衡にある流れ」として再定義。そして話は福岡氏個人の研究活動にフォーカスし、最終的には生命を機械的に、操作的に扱うことの不可能性
を説いています。
生命の定義として、果たして動的平衡説というのがどの程度正確なものなのか?それはさておき読了後、僕の興味はシュレーディンガーの著書『生命とは何か』に向かいました。とりあえずアマゾンのほしい物リストに追加しておこうと思ったら、なんと既に追加済みだったというw いつ、どういう理由から欲しい/読みたいと思ったのか全く思いつかないのですが、最近目にしたなかではダントツで高い評価を得ている(全19レビュー中、星5つが15レビュー)ので、これは必読の書かなと。『辺境生物探訪記』の著書の一人でもある長沼毅氏が高校生のための「超」教養講座 No.17でも触れているのですけど、第二次世界大戦の最中の1944年に刊行されたという点でも、是非読んでみたいと思いました。