イヴの時間
著
少し前にTSUTAYAでレンタルして見た映画『イヴの時間』について。映画の販売/レンタルが開始された当初から、iTunes Storeで取り扱われていて気になったのがきっかけ(あとTwitterで何人か、この映画の登場人物をアバターに設定している意味でも気にはなっていた)。一回目は徹夜明けの朝方に無理矢理、半分眠りながら見たせいか、物語を咀嚼することもなく、何となくつまらない印象だけが残っていたのですが……改めて二回目にしっかり見てみたら、物の見事にハマってしまいました。今年見たなかでもダントツに面白い、いやひょっとすると生涯を通じても上位5位にランクインする程度に面白い映画だったと思います。最近はよく主題歌の「I have a dream」を聞きつつ最後のほうのお気に入りのシーン、つまりテックスがマサキに話し始めるシーンを思い返しながら、そのような一種の(そして実に素晴らしい)命令違反が、果たして本当に起こり得るのだろうか?などと考えています。テックスが店内で人間と識別できたのは果たして唯一マサキだけだったのかな、とか。
アンドロイド対して過度に感情移入し、人間と同一視すること(劇中ではアンドロイド精神依存症などと呼ばれる)は、アニミズム的世界観の延長上において極めて自然なことと映ります。また対象がアンドロイドではないにせよ、そういったモノのなかに人格を見出すというのはこれまでにも(程度の差こそあれ)行われてきたことであるからして、決して「おかしなこと」とも思えません。ただ、対象がおよそ人間と区別のつかない……そう、まさに本作が描いたように頭上のリングの有無をもって視覚的にしか識別不能なアンドロイドが対象として一般化したとき、世界は一体どう変わっていくのか。空恐ろしくもどこか楽観的にそれを一日も早く目撃したいわけですが、この映画では現実世界より一足早く、そうした世界観を提示してくれているのが愉快・痛快です。まぁ、ポジティブに世界を描き過ぎという批判はあるのかもしれないけれど、にしても失礼ながら「たかがロボットアニメ」にこれほどまで優しい気持ちにさせられてしまうとは、自分自身驚いています。
劇場版は今年の春に上映されていたらしいのですけど、折しも池袋テアトルダイヤで12月4日〜12月24日まで、再上映されているとのこと。なんとか時間をつくって、劇場の大画面で『イヴの時間』をじっくり見直したいと思う今日この頃です。
[ 2010-12-19 追記] 12/17の晩、池袋テアトルダイヤに見に行ってきました。同時上映の『センコロール』をあまり面白く感じなかったぶん、『イヴの時間』は良かったですね……新たな発見もありましたし。