増補 スペースシャトルの落日
著
僕が松浦晋也さんのお書きになったハードカバー版の『スペースシャトルの落日』を読んだのは、覚え書きの日にちを信ずるなら2005年6月5日のこと。それから5年弱の時間が経過したわけですが、増補版がちくま文庫に収録されたというので、早速買って読んでみました。ご本人曰く全体の1/3ほどを新たに書き下ろし
たそうで、過去の版を読まれた方も、そうでない方にもオススメできますね。冒頭、「文庫版への序章」の以下のくだりは極めて印象的であります:
失敗をすることは恥ではない。失敗に学ばないことこそが恥である。そして失敗を繰り返すことは、一般に愚行と呼ばれる。私たちは、未来のために愚行を避けなくてはならない。
スペースシャトルの退役が目前に迫り、またオバマ政権が新たな宇宙政策を打ち出してまだ比較的日の浅いいまだからこそ、改めてスペースシャトルの意義(もちろんマイナス側面だけでなしにプラス側面もね)を考え直すには、本書はうってつけだと思いました。とりわけ、二〇〇五年以降の変化も含めて補足し、今後、我々が何をすべきかを論じた第5章
は、そうした再考を行ううえでの良い材料、言葉は悪いですが「たたき台」になるかと思います。以前より、Twitter宇宙クラスタで有人宇宙飛行の是非とかその実現手段につき「アルコール抜きの」討論会的な何かをやってみたいと考えていますが、本書の内容が参加者の前提知識における良きベースラインにもなりそう。
本書への注文というわけではありませんが、個人的にはスペースシャトルとそれが世界の宇宙開発にもたらしてきた影響を政治的、経済的、そして文化的変遷を踏まえて捉えたときにどうか、というのをもっと読んで/考えてみたいです。政治や経済との絡みについては本書のなかでも折に触れて登場するものの、技術的視点からの評価が本論(少なくとも僕の印象はそう)ですので(ry あとは余談ですけど、解説をホリエモンが書いているのが面白いですね。御二方は最近何かと話題?の宇宙開発会社SNSで活動を共にされているわけですけど、かくも蜜月の関係になろうとは微塵も想像できなかったっていうか。