ポケットの中の宇宙
著
アニリール・セルカン氏の最新著作『ポケットの中の宇宙』は、少し前に千葉の実家に帰省する電車のなかでさくっと読み終えた新書です。内容的にこれといって目新しいものはなく、意地の悪い書き方をすれば過去の著作を焼き直したかの印象。それでも本書を購入したのは、かつて一度だけですが氏の講演会に参加し、また『宇宙エレベーター』『タイムマシン』いずれの著作も買って読んでいた経緯のせいもあれば、氏の発想を自分なりに面白く感じていたせいもあるでしょう。と、ここまでは普通に読んだ本の覚え書きなのですけど、最近になってセルカン氏に経歴詐称疑惑が持ち上がっていることを知りました。いつの間にかWikipediaにある氏のページは要出典のオンパレードになっており、経歴の検証が2ch上で進められていて、以下のようなまとめコンテンツが公開されています:
上記のコンテンツで指摘されている点すべてが、指摘の通り偽りであると確定したわけではありません。しかしながら、なかにはなるほどと思う点が複数あります。たとえば、本書p55に掲載されている、セルカン氏が宇宙服を着ている構図の写真。NASAの記章が古い、胸のパッチがSTS-49のもの等、指摘されている点はいちいちごもっともなのです。そう言われて改めて写真を見直してみると、頭や首の部分の大きさと宇宙服とのバランスが、どうもしっくり来ません……あくまでも見た目だけの主観ですが、これでヘルメットをかぶった状態を想像すると、あまりに頭でっかちに思えます。要するに合成写真ぽく見えるってことなんですが、しかし何かしらやむを得ない理由があって合成写真を作りマスコミに配っていたとして、その背景には一体どんな事情があったというのでしょう?
僕はセルカン氏の熱烈なファンだったわけではないけれど、同い年でありながら自分とは比べようもないほど数多の成功に満ちた華々しい経歴を羨ましく思い、尊敬してきました。それだけに、経歴詐称疑惑が取りざたされている現状は、残念でなりません。つい経歴だけでなしに、講演で耳にした話や著書にかかれている内容に対してまで、疑いの目を向けてしまいたくもなります。個人的には、受けている指摘のすべてについて、疑いを晴らすなり事実を明らかにしていただきたいと思っていますが……それがかなわなくとも、せめて本業たる「インフラフリー」研究の成果を、しっかり社会に還元していただきたいと思います。