DESIGN IT! Forum 2008 - インタラクションデザインの現在と未来 -
著
昨日と今日の2日間にわたり、ベルサール神田で開催されたDESIGN IT! Forum 2008 - インタラクションデザインの現在と未来 -に参加しました。当社(何処)は本イベントのスポンサーなのですけど、自分は私費で2日目のみ参加……の予定が、諸般の事情により1日目もパーティのみ参加することに。代理でスピーチする役目を仰せつかったのですが、いろんな意味で辛かったです(苦笑)。それはさておき、2日目のプログラムに参加しての覚え書きなど。あ、関係ないけど2日目に行く途中、神田で働いていた頃に通っていたStarbucksの内神田店に立ち寄りました。懐かしかったー。
アダプティブ・パスにおけるインタラクションデザインの実践 - ケーススタディ:ニューヨーク交通チケット自動販売機、Google マップ、Microsoft Office 2007
長いタイトルにあるまんま、Dan Saffer氏が取り組んだ3つの事例を中心に、具体的なインタラクションのデザインプロセスを紹介するというセッション。最も興味深かったのがニューヨーク交通チケット自動販売機の話で、なんでもN.Y.在住人口の4割が銀行カードを持っていなかった(=ATMを使ったことがなくタッチスクリーンに馴染みが薄い)にもかかわらず、タッチスクリーンを採用したという。
そこは質疑応答の時間にしっかり質問したのですけど、採用の背景には市の当局よりメンテナンス上の理由からタッチスクリーンへの要望があったこと、またプロジェクトがある程度進行するまで人口の4割云々の事実がメンバーに知らされなかったこと、そして導入コストの3点があったらしい。既に導入から3〜4年経っているそうですが、確かに当時としてはリスキーな選択だったかもしれないけれど、未来に向けたデザイン、学習機会の提供といった側面からすれば良かったのでは、というフォロー?も。
また二点印象的だったのが、まずデザインプロセスとしてパズルを解くか、ミステリーを解くか?というお話。解決策があらかじめ一義的にみえているなかでは前者なのだけど、情報過多な環境下でデザイナーの取るべき方法論としては後者のアプローチが有効、みたいな説明がありました。それとOffice 2007についての話のなかでカオスと秩序に言及するシーンがあり、秩序あるデザインに対し意図的に不安定要因を加えることでエキサイティングなデザインを創るという話があって、それって戦闘機の設計に似ているなと。あえて空力的に不安定にすることで運動性能を高める、みたいな。
ソシオメディアにおけるインタラクションデザインの実践 -デザイン主導のシステム開発メソッド
上野さんのセッション。スライドの表紙に登場していた黒電話、実は上野さん宅で現役で使われている電話というのには驚きました。意味が非常に曖昧というか、文脈に大きく依存して変化するような場合、まずその言葉を(辞書的な意味はともかく)定義して話を進める必要があるわけですが、本セッションでの
- デザイン
- ユーザーが知覚するシステム像
- ユーザー
- 操作者
という定義はとてもわかりやすかったし、その後の話の通りも良かったように感じました。個人的な興味・関心の中心としては、デザインプロセスが全工程にわたることの意義、そしてまた要件定義次第ではコストもスケジュールもさまざまに変化し得ることへの理解を、いかに意思決定層に訴求すべきかってあたりに収斂したのですけど、そこは上野さんの言葉を借りれば「泥臭い」努力が必要なようで。
成功体験を着実に積み重ねて訴求して行くというのはもちろん必要ですが、逆にデザインプロセスをおろそかにしたことで得られる失敗体験の共有というのも、今後業界としてこの分野を発展させていくうえで必須ではないか?などと思ったり。とにかく、多面的に攻める(謎)必要がありそうだなぁと。
インタラクティブジェスチャー - タップはクリックの新しいかたち
再びDan氏が登壇。冒頭で紹介された、学生の発案した「手が汚れたままでも操作可能なリモコン」が印象的でした。なるほど、確かに台所仕事をしている人にとっては、指が濡れたり汚れたままでもテレビなどを操作したい場面ってあるでしょうね。まだ見たことがない人は、いちど動画:B&Oの触らないリモコン プロトタイプ - Engadget Japaneseを見てみると面白いかも。
本セッションは、質疑応答の時間が興味深かったかな。さとさん(誰)からの質問で、ジェスチャーの国際化/地域化についてや、いずれジェスチャーからの入力に対応した機器が日常にあふれたときに相互に干渉する懸念は無いの?といった指摘が。前者については確かに識別が必要だし、後者についてはなんらかの標準化(それはおそらく苦難の道だろうけど)が必要かもしれない、というのがDan氏の回答でした。
iPhone 3GのUIから始まる未来のインタラクションデザイン
Dan氏、ソシオメディアの篠原さん、上野さんに加えて、飛び入りでコンセントの長谷川さんも参加されたパネルディスカッション。前半が、上野さんのセッションでの泥臭い話の続き的なところがあって、聞いていて楽しかったですね。後半はテーマにあるようにiPhoneを絡めてのUI開発論、というかあるべきプロジェクト体制像的な部分にフォーカス。
なぜiPhoneのような製品が生まれたのか?Steve Jobsのような人間がいなければ不可能だったのか?といったあたり、会場にもしもNobiさんがいらしたら、もっと盛り上がったこと請け合いですね。Steve Jobs' Magicとか、In-House Championみたいなフレーズも飛び出しましたが、Mini Jobsを各プロジェクトに、みたいなDan氏の提言ってどうなのかなぁ。想像するだけで楽しそうでもあり、同時に不安にも思いそうな気がw
……そういえば帰宅してから気がついたけど、Dan氏から著書(といっても会場に入る際にいただいた翻訳書のほう)にサインをいただくのを忘れました。休憩時間に名刺交換させていただいたとき、きっと日本にはまた来るよ的なことを仰っていた気がするので、それに期待しますかね。