構造化するウェブ
著
岡嶋裕史著「構造化するウェブ」を読了。ブルーバックスなんて買ったの、ホント久しぶりのことです。しばらく前にタイトルが気になって八重洲ブックセンターで購入、そのまま机の片隅に積まれたままだった一冊。ウェブがどこから来て、どこへ行くのか、過去から未来へと紡がれるウェブの進化の系譜を、技術に基づいてできるだけ平易に解説
ってことなんですが……その割にはウェブの捉え方に偏りが感じられてしまいました。タイトルにある通り、一貫しているのは構造化の意義とそれが過去・現在・未来のウェブにいかなるインパクトをもたらしてきた/もたらすか、という内容であって、それ以外の視点からの評価・分析には乏しいです。構造化という視点だけでウェブ全体を語れるものではないと思いますし。もっとも、これはブルーバックスというコンパクトな書籍の形態上、致し方なかったのかもしれませんが。
疎結合とか密結合、それにSOAといった基本的な用語の解説は確かに非常にわかりやすかったのですけど、他の部分では筆者の主張に疑問を抱く部分が少なくありません。繰り返し登場するウェブ 2.0とかウェブ 1.0とかいう言葉に漠然と嫌悪感を抱いているせいもあるのだろうし、そもそも自分の不勉強ゆえってところも多分にあるはずで、自分で今後検証する必要があると思っていますが、たとえば以下のような主張、くだりを疑問に感じました:
- セマンティックウェブがいまだ実現されていない主たる要因はインターネットが商用に供されたことにある(p.81)
- W3Cはウェブの普及が情報の構造化よりも重要だと
確信犯的に
考えていた(p.85) 「ブログ」として認知されている機能を実装するためには、XHTMLが必須
(p.109)技術的特性
で比較すると、インターネットより電話網のほうが信頼性が高い(p.130)
また、著者の言うウェブの再構造化が進んできた背景として、それを実現するに足る技術群の標準化であるとか、その実装の普及により多くのページを割いて解説してくれても良かったのではないかなぁと感じました。再構造化を、そのプロセスにかかわるステークホルダー(標準化団体はもちろん、標準化された仕様のユーザーであるアプリケーションベンダー、そしてサイト構築に携わる開発者/デザイナー、サイトのエンドユーザーなど)個々の視点から、もっとバランスよく掘り下げていただきたかった、みたいな。