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オンリーワン ずっと宇宙に行きたかった

野口聡一宇宙飛行士の書いた「オンリーワン ずっと宇宙に行きたかった」を読了。テキストの分量としてはそれほど多くなく、実際3時間ほどで読みきったのですが、なかなか興味深い記述が随所にあって楽しめました。第八章のなかでこの本は宇宙飛行士に興味を持った日本人は必ず読む本だと思うとありましたが、これから宇宙に行くつもりのある人、(どういうかたちであれ)宇宙を目指そうという人には必読の一冊ではないかと思います。
気になった点のひとつに、野口飛行士が自らの普通さを繰り返し強調していた点があります。宇宙開発史上、宇宙飛行士といえば知力・体力ともに常人の及ばぬスーパーマン的な見方をされることが多かったと思います。そういった一種のステレオタイプに対する否定がぼくは普通の人だけれどとかぼくは普通の人間ですという表現に込められているような。そういった文脈で本書に何度「普通」という言葉が登場したか、いちいち数えてはいないけれど、とにかく印象的ではあります。第九章で歴代の宇宙飛行士を3つの世代に区分/定義していますが、宇宙飛行士という職業の特殊性を否定するが如く自身の凡庸さを主張してみせるというのは、まさに「新世代」の宇宙飛行士ならでは、かもしれません。
また、国際的な協調の下で進められる宇宙開発において、日本がそのアイデンティティを確立するための提言的なくだりが散見されたのも個人的には要注目。とりわけ英語圏で対等に活動していくという側面については、たとえば第三章で国策として外国語教育を考え直すべきじゃないかと言及されています。その点については是非いちど、より具体的なアイデアを伺ってみたいものです。
第九章は「『野口聡一』が宇宙へ行った意味」という内容なんですけど、そこで科学探査という意味では、南極観測の成果と近いとお書きになっている点も見逃せません。探検や調査の対象でしかなかった南極が、いまや観光の対象でもある事実は野口飛行士もご存知だと思いますが、宇宙空間も一応既に観光の対象となってはいるわけで、両者の対比というのは僕のなかでは非常に的を射たものだったのでした。

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